Fortunate Link―ツキの守り手―
「あっ。眉毛ちょっと細くしちゃったけど良かった?」
「…い、いいけど」
ビックリした。
完全に自分が『女』に変身していた。
しかも化粧もほんのり薄い感じで、いわゆるナチュラルメイクというやつ?
髪はやたら引っ張られて痛かったけど、頭頂部に一つに纏められ、ポニーテールを何か散らした感じのパイナップル的な…よく分からないが何かそんな感じに仕上がっていた。
ウィッグか何か知んないけど、ちゃんと地毛の薄茶色に合わせてある。
女子達はそんな俺をまじまじ見ながら、少し不服そうな顔をする。
「でもなーんか微妙な気分…。あたしらより可愛くない?」
確かになかなかいい線をいっている――ような気がする。ちっとも嬉しくないが。
これもこの演劇部のコ達の腕前なのか。
なかなか凄い技だ。
「今日一日、頑張ってね!」
バシッと背中を叩かれる。
……今日一日。
途端にその言葉が重石のようにのしかかり、地中に潜りたくなった。
しかし残念ながら、地中に潜る訳にはいかなかった。
この『フォックス・ハント』というゲームでは、全校生徒がハンターとなって参加し、学園祭を楽しみながら自分のクラス以外のキツネ達を探し出し、その本性を暴く。
そしてキツネ達も『見つからないようにどこかに隠れたまま』なんて事が無いように、廻らなければいけないポイントの書かれた紙を事前に手渡されていた。
そこに書かれた場所を巡り、書かれた事を遂行したうえに、男だと周りにバレないように行動しなきゃいけないらしい。
「……棄権してぇ」
よろよろと演劇部の準備室から出る。
しかし、もはやこれだけ色々と女子達が手を尽くしてくれたわけだし、その努力を無に帰させる訳にもいかない。