Fortunate Link―ツキの守り手―


「……白石さん」

よりによって厄介な人に出会ってしまった。


その相手は俺を見て、パッと花開くように屈託の無い笑顔を浮かべる。

そしておもむろにこちらの顔に向けて手を伸ばしてきた。

「…へぇ。可愛いじゃん!すんごく可愛い!」

色んなところを無遠慮にペタペタ触ってくる。

「ちょっ」

周囲を見ながら、声をひそめる。

「目立つわけには…」

「分かってるよ」

ふふっと笑う。
その笑顔を見る限り、本当に分かっているのか甚だ疑問。

ていうか、まだ触ってるし…。

「あのさ」

気になっている疑問を口にしてみる。

「……やっぱり見た感じ”俺”って分かる?」

すると、白石さんは、むふふふっと笑い出す。

「あたしはシュンがどんな格好してたって、シュンって分かるよ♪」

「……へ、へぇ」

それって答えになってない気もするけれど…。


しかしこんなに早く知り合いにバレるとはマズい。
上手くいったかも…なんて思ってたけど、やはり女装なんて無理があったんだ。

この調子だと、最短記録でバレてしまう可能性が……。


顔をしかめて悩んでいると、


「心配しなくたって、だーいじょうぶだよ」


こちらの考えている事など分かっているように宥めてくる。

「シュンだって分かるのはあたしだけ。
だって今のシュン、女の子以上に女の子っぽいよ?背が高くて綺麗で、モデルさんみたいだもん」

「………」

思わず言葉を失う。


――綺麗…?
――女の子以上に女の子っぽい…?


恐らくは褒め言葉であろうその言葉をかなり複雑な思いで受け取った。

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