Fortunate Link―ツキの守り手―

連れて来られた先は女子更衣室。

女子しか知らないパスワードを扉のパネルに打ち込まないと開かない仕組みになっている。

白石さんがその扉を開け、難なくその部屋の中へ入り込む。


「俺が入ったらまずいんじゃ…」

「心配ないよ。今のシュンは女の子にしか見えないから」

「………」

そう言われると悲しい気分になるのは何故だろう。


「シュン、上の服脱いで」

白石さんがロッカーからごそごそと何かを取り出しながら言ってくる。

「えぇっ?!」

ものすごく何でもない事のように言ってきたけど、間違いなく問題発言。

「大きい声出さないの。これ付けるだけなんだから」

そう言って、無造作にビラリと広げたもの…。


それを目にした途端に鼻腔の奥がカッと熱くなった。
慌てて鼻の上を押さえる。危うく鼻血を噴き出すところだった。

赤いヒラヒラの付いた黒のブラジャー。
ドキツさ満点のシロモノ…。

「そ、それって…」

「あっ。サイズは大きめだから大丈夫だと思うよ。今日のために用意してたの」

……答えるところが違う。

あと、それに用意周到すぎやしないか。

「いや。それは無理!色々と無理!」

ぶんぶん首を振り、諸手を振って、全力拒否。

すると白石さんは「ふーん」と唇に人差し指をやりながら微笑む。

「大きな声で叫んじゃおうかな?ここに誰か呼んできちゃおうかな?」

扉の向こうを見やりながら不敵に笑う。

この場所は男性侵入禁止区域。或る意味で牢獄だ。
こんな所にのこのこついて来るんじゃなかった…と今更ながら後悔。

「………」

…悪魔だ。この人、悪魔だよ。

白石さんは固まる俺を見て、勝ち誇った笑みを浮かべた後、

「脚線も綺麗だしスタイルも良いのに胸だけペタンコなんて不自然よ」

「…う」

確かに不自然かもしれないが、そこまで徹底しなければいけないことなのか。

それに女子の下着を身に付けるなんて変態の所業だぞ。


そう戸惑っているうちに、白石さんが流れるような動きで制服のボタンに手を掛けてきた。

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