Fortunate Link―ツキの守り手―
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「いやー月村さん強いね」
アカツキは宣言したとおり、将棋部の部員達相手にオセロで連勝ばく進中。
がっくり項垂れている部員がちらほら見当たる。
その様子を遠くに見ながら、のんびり感想を漏らすのはお気楽馬鹿なクラスメイトことサトシだ。
そういえばこいつは将棋部の幽霊部員だった。すっかり忘れていたけど。
今はまったりと俺相手にオセロに興じていた。
「しかしビックリしたぞ」
「……何が?」
「可愛い子がやって来たと思ったらまさかシュンだったなんて、な」
「気づかない方がどうかと思うけどな。…隅ゲッツ」
角に白石を置いて、次々と黒を白に引っくり返していく。
こいつは俺が俺だと名乗るまで全然気づきやがらなかった。ホント馬鹿だ。
「その見た目じゃあ分かりっこねぇよ。お前、実は女だったんじゃねぇの?」
「そんな事実が発覚したら、俺の方が衝撃で心臓が止まるわ」
とどめの一手をさした。
盤上の半分以上が白で埋まった。
『白黒つける』というのは、まさしくオセロにピッタリな言葉だな。
サトシは盤を見ながら頭を抱えた。
「ぐわっ、途中まで俺が優勢だったのにっ」
「ばーか。後半戦を制するものがオセロを制するんだよ」
おっ。今のちょっと格言っぽくないか。
「マジかよー。俺これで3敗目だぞ」
「当たり前だ」
得意満面に笑ってやる。
「俺はすでに【オセロ必勝法】を会得しているからな。無敵だ」
「…何だよ、それ」
「そういう攻略本があるんだよ。
昔、占いの館のオジサンに安価で譲って貰ってな。何でも一生のラッキーアイテムとなるものだから買えと言われて…」
するとサトシはその細い目をさらに細めながら俺を見てきた。
「ぜってーダマされてるよ。それ」
「何をぅ?!」
「お前さ、前にも同じ手口で壺とか鈴とか護符とか買わされてたじゃねぇか。いい加減こりろ」
「こら。馬鹿にすんなよ。あれは月に一度手入れをすれば運が開けるという謂れのある品々で遠くシルクロードから伝来してきた…」
「はいはいっ」
その素晴らしさについて切々と説いてやろうと思ったら、サトシに面倒くさげに頷かれてしまった。