Fortunate Link―ツキの守り手―


「……ところでさ」

オセロ三昧でいい加減飽きてきたところで、サトシがその場で立ち上がった。

「何だよ?」

そろそろここを終わりにして次行こうかな、とか考えつつ尋ねる。

するとサトシは少し声を潜めながら、

「やって欲しい事があるんだ」

「何を?」

「…ちょっとそのままでいいから上目遣いで俺の方を見てくんないかな?」

「はぁ?何言ってんだ」

突然の意図の掴めない頼みに、眉をつり上げる。

「いいから一度だけやってみてくれっ」

妙な迫力で言ってくる。

その強引な口調におされ、俺は渋々言われたとおりに奴を見上げた。

するとサトシはいきなり身震いを起こした。表情も何か変だ。

「うわ。やべっ。ぞくぞくした」

意味不明なことを言う。何なんだよ。

「大丈夫か。風邪か?」

「いや違う。ちょっともう一度やって欲しい」

「……は?」

「もう一回上目遣いで見てくれ。んで、女の子っぽく『ねぇサトシ君』って言ってみて」

そこでようやくサトシの様子がおかしなことに気づいた。

「おい。何言ってんだ?俺、男だぞ」

「そんなのはどうだっていいんだ」

興奮気味に言ってくる。目が怖ぇ。

「お前にやって欲しいんだ!」

変な熱に侵された声で言う。
たちの悪いウイルスにでも汚染されたのか。

そのサトシの異変に、悪寒が駆け巡るのを感じた。

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