Fortunate Link―ツキの守り手―
うわー。どうすればいいんだ、これ。
見てはいけないものを見てしまったみたいでショックだ。
「馬鹿っ。正気に戻れ」
「俺はいつだって正気だ」
嘘つけ、と思う。
「おい。落ち着けっ。お前何か健全な道から外れようとしてるぞ」
「外したっていいさ」
サトシはフッと笑う。
俺は全然笑えない。
「今日は一日一緒に学園祭を廻ろう、シュン」
両手で俺の手を握り締めてくる。ぎえぇっ。
「だぁれが一緒に廻るか、ボケェェ」
その手を思いっきり振り払った。
「んなつれない事言うなよ~」
今度は腕を掴んできた。やめろよ馬鹿。
振り払おうとするがなかなか離れない。妙に力が強くしつこい。
「離せ、馬鹿っ」
「馬鹿でもいい。何でもいい。全て受け入れよう」
「は、離れろ!」
「離さないさ」
「い、いい加減にしろって」
やけくそで腕を思いっきり振るったら、
「……あがっ」
偶然の産物は時に凄い威力を発揮する。
裏拳が決まってしまった。
肘が奴の顔面にめり込んでいた。
反射的に動いてしまった自分の腕を呆然と見る。
「…あちゃー」
その事態に周囲が騒然となる。
せっかく目立たないよう埋没していたのに、再び注目されつつあった。
「喧嘩だ」「怖ーっ」「あの女の子が…」とかいう声まで聞こえる。
「やべっ」
この状況は到底、自分では対処しきれそうにない。
崩れ落ちるサトシを尻目に俺はその場を脱兎のごとく逃げ出した。