Fortunate Link―ツキの守り手―
「てめぇの方こそ何やってんだよッ」
凄まじい形相で怒っていた。
もう般若とかそういうレベルを超してるぐらいに…。
「いや…あの…」
それを見て、ザザーッと血の気が潮のように引いていく。
「世話かけさせやがって…。勝手に変な奴らに捕まってんじゃねぇぞコラ」
上から圧し掛かるその威圧感に耐え切れず、俺は跳ね上がるように起き上がった。
何だか今日のアカツキはずっと怒りっぱなしだ。
「しかも人を置きっぱにしやがって」
先ほども不機嫌だったが、その火にさらに油を注いでしまった感じ。
「…ご、ご、ごめん」
具体的に何がいけなかったのかよく分からなかったが、とにかく謝った。
しかし突き刺さるその眼光は少しも緩まなかった。
「許さねー」
地を這うアカツキの声。
ひぃーっ。一体どのようにして許しを請えば…。
その時、
廊下からドタバタと複数の足音が聞こえてきた。
その足音はだんだんとこちらへと近づいてくる。
「…うわ、やべ」
どうやら先ほどの連中が追いかけてきたらしい。しつこすぎる奴らだ。
「…どどうしよう」
あたふたと慌てふためく。
ここに入り込まれたら完全に袋の鼠だ。
退路は無い。
するといきなり、ガッと胸倉をアカツキに掴まれた。
「わっ」
怒りに猛っている目がすぐ目の前に…。
ひゃーっ。確実にヤられる。ボコられる。
追いかけてくる奴らより、そっちの方に気を取られた。
怒ってるのは分かるけど、ここは穏便に話し合いで解決を…なんて聞いてくれるわけないか…。
迫り来る脅威に怯えながらそんな事を考えていると、掴まれた胸倉をぐいっと引き寄せられた。
反射的に竦み、目をつぶった。
襲ってくるだろう打撃に備えて…。
しかし――、
拳も肘も膝も足も襲ってきやしなかった。
その後は何が起こったのか、よく分からなかった。
…あっと言う間もなく――。
「……ふんぐ」
――唇に温かく柔らかいものが荒々しい勢いで押し付けられた。
と同時に教室の扉が開いた。