Fortunate Link―ツキの守り手―
俺は思わず、ふ、と笑った。
胸の奥に凝り固まっていた熱さがなだらかに溶けていく。
「んな事言って、お前だってそうしなかったじゃねぇか」
「………」
むっ、と黙り込むアカツキ。
何だかその様子が言いこめられた子供みたいで…。
不思議と頬が緩む。
「要らぬとこで強さなんて発揮しなくていいんだよ」
そう軽く言って笑う。
「……何だ、それ」
外を睨んでいたアカツキの瞳が少し翳った。
考えるように視線を泳がせながら口を開く。
「…瀬川とか、ああいう奴ら相手なら発揮するというのか?」
思わぬ方向に質問を返してきた。
俺は一瞬言葉に詰まった。
一歩踏み込んで訊いてきたその問いかけに…。
けれど今度こそちゃんと答えなきゃいけない気がした。
唾を飲み込んで、
「………そうだ」
頷いた。
アカツキは俯いた。
「…それは奴らが強いからか?」
「そういう訳じゃねぇよ」
首を振る。
……そうじゃない。そんなのはどうでもいい。
相手が強いか弱いかなど一切関係ない。
だってこの力は――、
俺は――、
「……シュン?」
アカツキがそらしていた顔をこちらに向けてきた。
首を傾げて、顔を覗き込んでくる。
途端に胸が高鳴った。
その顔を視界に収めながら、滑るように言葉が落ちた。
「――俺の力は守る為だけに有るものだから…」
そうだ。
守る為に…。
この力はアカツキを守る為だけにある…。
アカツキを守る為だけに使う。
アカツキを守る為だけに…俺は…。
「……守る為?」
アカツキが目をしばたたかせ、訊いてくる。
俺は教室の中ではないどこか遠くを見ていた。
「ああ…」
――だから…。
アカツキを守る為以外に決してこの力を使わない、と遠い昔に誓っていた。
それは同時に自分を縛る縛め、鎖、のようなもの。