Fortunate Link―ツキの守り手―
『――俺もこいつも普通の人間やない。その気にさえなれば、こうやって殺し合いも出来てしまえる』
以前、瀬川はそんな事を言ってきた。
確かにそうなのかもしれない。
俺は普通の人間じゃないのかもしれない。
だからこそ、一線を引いておく必要が有る。
決して越えてはならない一線を決めておく必要が有る。
俺が俺であるために…。
でないと――、
本当に闇に染まってしまう。
あいつのようになってしまう気がした。
瀬川蓮――あの男は……、
恐らく…
すでにその一線を越えてしまっている…。
直感的にそう感じた。
「……あててててて!!」
いきなり頬に走った痛みに悲鳴を上げた。
アカツキに頬を思いっきりつねりあげられていた。
痛みを感じて初めてつねられたことに気づいた。
「……何すんだっ!」
涙目でアカツキの方を見る。
「勝手に一人でぼーっとしてんじゃねぇよ」
相変わらず不機嫌な顔がそこにあった。
「いきなりつねることないだろっ」
「そうでもしねぇと気づきそうになかったからだ」
むすっとした顔でアカツキが返す。
「……なぁ、シュン」
「何だよ」
アカツキの視線は顔からわずかに外れていたところに向いていた。
「…髪がほつれてんぞ」
「えっ?!」
言われてみて、手で頭を触ってみるが全然分からない。
「あー触んな。余計ぐちゃぐちゃになる」
それを制してきて、椅子を指差す。
「……座れ。直してやるから」
「えー」
「何だ、その『えー』は」
据わった目で見てくる。
「いいから座れ」
腕を引っ張られ、力ずくで椅子に座らされた。