Fortunate Link―ツキの守り手―
「もうそんな時間なんだな…」
外はもうとっくに暗い。
学園祭が終わり、片付けも終えて、「今日は一日お疲れ様」の打ち上げの頃合なのかもしれない。
さてさて俺達はどうするべきか…。
「…いやー。すっかり戻りそびれちゃったなぁ。あははは」
決まり悪さを隠すべく、無駄に明るく笑う。
でもやっぱり上手く笑えなくて、見るからに不自然で、やたらぎくしゃくとしてしまって、まるっきり駄目な感じ…。
「まだも少しここに居るか?」
アカツキが聞いてくる。
「……えっ」
ぎくりとする。
いやいや待て待て。
俺は今さっき何の気の迷いか”あんなこと”をしようとしてしまったばかりなんだぞ。
こっちはまだ誤魔化しようもなく、体が熱く火照っていた。
心臓が高鳴って止まない。
完全に未遂に終わってしまった以上、同じ現場に二人でとどまり続けることだけは避けたい。気まずすぎる。心臓が破裂してしまう。
「ここはいったん戻ろう」
変な汗をかきつつ提案。
「そうだな。さすがにクラスのコが心配してるかもしれねーし」
アカツキもすんなり賛同してくれて、二人で保健室を出た。
「あっ」
廊下を歩き出してから、ふと肝心な事に気づいた。
「このまま二人で戻るのはマズイな」
こんな遅くまでアカツキと二人きりで行動していたのがバレたら…。
何を言われるか分かったものじゃない。特にサトシの阿呆に。
「こっそり戻ろう。こっそり」
「そんなに気にしなくても大丈夫だろ。皆まだお祭り気分だろうし」
アカツキは楽観的に言う。
どうやら少しは元気が戻ったようだ。
こっちはまだ胸の鼓動が速い。
いい加減止んでくれ、と思うが自分ではどうにもままならない。
「そういえばお前、その格好のままじゃん」
「それを言うならお前だって女の格好のままじゃねーか」
言われて気づく。
すっかり忘れていた。まずいな…。
最初は違和感を感じまくっていたのに今ではすっかり順応してきている。そんな自分が怖い。
「更衣室に寄って着替えてから戻るか」
一刻も早くリセットしたい、と思った。