Fortunate Link―ツキの守り手―
第14話:さよならは突然に
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学園祭も終わりに近づく頃――。
西の空が茜色に染まり、夕闇がじわりと迫っていた。
校舎の裏に自販機の影になるように設置されてるベンチ。
そこへと近づく、黒く長く伸びる人影。
「…こんなところに私を呼び出して、何の用かしら?」
漆黒の長い髪が風になびく。
つい先日この学校に来たばかりの編入生、水波雅(ミツハミヤビ)。
彼女はベンチに座っている白石星羅(シライシセイラ)に声を掛けた。
二人の顔の造りはよく似通っていた。
「…そうね。
じゃあ単刀直入に訊こうかしら」
星羅は立ち上がり、雅に向き合った。
「――あなたは誰なの?」
すると雅は、ふ、と笑った。
「長らく会わない間に、お姉さんの顔も忘れちゃった?」
「その化けの皮の下は何だって訊いてるんだけど」
星羅は鋭く雅を睨む。
「これが何だか分かるかしら?」
そう言って手を広げる。
そこには小さく赤いサイコロが転がっていた。
「あなたが本当に私の姉なら、知っているはずよね?」
「星羅」
「何も知らないんでしょう。
だったら、私の前から消えてくれない?この学校からも」
「星羅」
その時、ひたり、と雅が星羅に視線を合わせた。
「それはお姉さんに渡されたものかしら?」
雅はにやりと口角をあげて、問いかける。
「あ…」
その目に心を覗かれているような気がして、星羅は後ずさった。