Fortunate Link―ツキの守り手―
俺は思わずアカツキの腕から逃れた。
白石さんのほうへと向かい、彼女と向き合う形でその前に立った。
「見てて分かったろ?」
俺はアカツキの方を示しながら言った。
「あいつは確かに強運を持っているが、それに頼ろうとはしない奴だ」
幼馴染としてずっと隣で見てきたから分かる。
こいつは目の前に立ちはだかる山だろうが岩だろうが、自分の手で突き崩して、己のレールを敷くような女だ。
「運があるとかないとかは関係無い。
勝負ってのは正々堂々やるもんだろ」
それはどんな勝負でも共通するものだろう。
ギャンブルなんてイカサマが横行しているとか聞くけど。
「運は廻ってやってくるかもしれないけど、
それでもやっぱり勝利は掴んで取るもんじゃないのか」
白石さんは俯いていた顔を少し上げた。
そして俺はさらに何かを言おうとして…、
しかし既に後ろからアカツキに襟首を掴まれていた。
「偉そうなことほざいてねぇで、それよりメシだろ」
…偉そうとは何だ
せっかく俺が格好良くいい言葉を云ったのに。
何となくグッドエンディングに向かっていたのに。
だけどそんな心の声はアカツキに聞き届けられそうにない。
俺はずるずると強引に入り口へと引っ張って行かれる。
敢え無く退場。
扉を出ようとしたところで、再びちらりと白石さんのほうを伺い見た。
すると、彼女のほうも俺をまっすぐに見ていた。
その口がふと小さく動いた。
「そうね」
と頷いたように見えた。