Fortunate Link―ツキの守り手―
「おはよう。守谷君」
扉の前には、白のつば広の麦わら帽子をかぶり、白のワンピースに身を包んだ、美少女なお嬢様が立っていた。
「し…白石さん」
自然と声が引き攣る。
それもその筈。
先週、学校で俺を騙してくれた張本人である。
「なんでここに…」
すると白石さんはにこやかに微笑んだ。
「なんでって、招待状が届いてたでしょう?」
「……え?」
ついさっき見ていた手紙のことを思い返す。
「……まさか、あれって」
届出人の名前が書いてなかったが、まさか…。
「迎えに行くって書いてたでしょう?」
目の前のお嬢様は優雅な笑みを浮かべたまま、そうのたまった。
「ちょっと、待て…」
頭を押さえながら、ストップをかける。
「なんで俺がそのよく分からんパーティーに招待されるわけ?」
「だって、それは…」
一歩俺の方へ近づき、見上げてくる白石さん。
「…あなたに私の勝負を見届けて欲しいの」
「勝負?」
「そう。
前に言ったでしょう?負けられない勝負があるって」
ああ。
そういえば、彼女の家に連れて行かれた時、そんなことを言ってたような…。
「今回の船上パーティーの余興の一つとしてチェスでのゲームがあって、それに私が出ることになってるの。
その勝負に必ず勝つわ。だから見ていて欲しいの」
「……えっと。
そんなこと言われましても…」
ポリポリと頭をかく。
「……まぁ、あなたに拒否権なんてないけれどね」
彼女の脇からぬっと黒スーツの屈強な男が二人現れる。以前、彼女の邸宅にも控えていたSPとかいう輩。
というか、どっから湧いて出てきた?!
「それに私がどうやって月村さんのことを知ったか、気にならないかしら?」
白石さんは、含んだ笑みを浮かべて言った。