Fortunate Link―ツキの守り手―
(――元通りに戻る…?)
言葉を心の中で反芻する。
本当に世界は元に戻るというのか。
何もかも元通り?
アカツキの居ない世界が……?
そんな……
俺は――ぷつん、と何かが切れるのを感じた。
感情のタガが外れる。
「……何が…元通りだ」
ギッと睨み、一挙動で棒手裏剣を相手めがけて飛ばす。
「――アカツキが居なくて、何が元通りだ!」
憤るがままに、男の方へ突っ込んでいった。
何も見えない。
感情は千々に乱れきっていた。
男は冷静に手裏剣を避けた。
そいつに向かって、抜かないままの木刀を渾身の勢いで振り下ろす。
噴出するこの感情をぶつけるように。
振り下ろして切り返して薙いで。
容赦なく畳み掛ける。
しかし、あっという間にその猛攻は食い止められた。
薙いだ刀を受けられ、押され、バランスを崩される。
その隙に、杖をクルリと返し、その杖身で足を投げ払われた。
床に背中を叩きつけられて崩れ落ち、呻いた。
「……うぐっ」
その衝撃に全身が軋みをあげる。
あちこちの傷が一斉に悲鳴を上げた。
「そんな体で何が出来る」
冷たい声が落ちてくる。
氷よりも冷たい声音だ。
心に沁みて、凍えそうだ。
何よりも痛く沁みる。
自分の無力さを突きつけられているようで。
「貴様は何も出来やしない――」
俺は床を捉える手に力を込めた。
(――何も出来やしない…)
――何も守れやしない。
何度言われてきただろう。
今までを振り返る。
悔しいが、その言葉を否定できない。
俺はアカツキを守りきれていない。
「……くっ…」
呻きながら、片手だけで体を起こす。
必死で起き上がる。
木刀を支えに、何とかその場に立ち上がった。