Fortunate Link―ツキの守り手―
(………くそっ)
何かを言い返したくて、言おうとして……。
ガクリ、と膝をついた。
もう体も意識も限界に近づいていた。
動け、と思っても少しもままならない。
「――こうしているうちに、世界の、時の、自浄作用によって歪みは消え去るだろう」
淡々と言うんだ。
その声に嘘も冗談も微塵も無くて、余計に心を急かせる。
なのに、動けなくて…。
「歪みとともに彼女も消える――」
掠れ掠れになる意識の中で思う。
(……アカツキ)
どこに居るんだ…。
一体どこに……。
『――いつも助けて欲しいって思った時には、必ずお前が現れる』
あいつはそう言った。
怯えきった目をしてそう言ったんだ。
今あいつはどう思っているのだろうか。
何を思っているのだろうか。
「助けて欲しい」って思っているんじゃないだろうか。
そう考えて苦笑する。
(………なんだ)
俺がそう願っているだけじゃないか…。
そう思っていて欲しいって、俺が願っているだけじゃないか。
嫌になるほど自分勝手に…。
『――だけど私はそれが怖い』
アカツキは酷くそのことを恐れていた。
――いつか失うんじゃないかって怖い…って。
「…………アカツキ」
怖がる必要なんて無い…。
呼べばいいんだ。
そう求めてくればいいんだ。
俺に。
助けて欲しいって。
(……そうすれば、いつだって、俺が現れるんだろ)
言っていた言葉を思い出し、思う。
だったらそうしてくれればいいんだ。
迷わずに。
怯えずに。
呼んで欲しい。
俺はお前に呼んで欲しいんだ。
俺はお前に頼られたい。
頼りとして欲しい。
ぼやける視界の隅で、あいつを思い浮かべる。
(俺はお前に……)
――必要とされたい。
そう強く願った途端に、なりふり構わず呼んでいた。
「――アカツキ!!!!」