Fortunate Link―ツキの守り手―
もう動かせなかったはずの手足が…。
求め、走る。
どこからともなく力が湧くんだ。
願うほどに強く。
強く強く前へ。
風のように疾駆する。
その前方を男が立ちはだかった。
行かせまい、としているらしい。
(……邪魔だ)
勢いは押さえず、そのまま突っ込んでいった。
俺にとって、そいつは障害物としか見えていなかった。
(――アカツキが居るんだ。邪魔をするな!)
「――どけぇぇぇっ!!」
吼えて、刀を一閃。
力まかせに振るう。
相手の掲げる錫杖ごと大きく薙ぎ払った。
バギンッッッ!!!!
杖は綺麗に真っ二つにへし折れた。
男は目を見開いて、その様を見る。
そして反射的に脇へと飛び退った。
前を遮るものは何も無くなる。
俺は後退した男の方には目もくれず、先へと走った。
上体を深く沈ませ、膝を最大限に曲げる。
次の瞬間にその溜めた屈伸を一気に噴出させる。
ダンッと思いっきり地を蹴った。
高く高く宙に飛び上がる。
青白く浮かぶ光に向かって――。
翳した刀身がその光を映して白く瞬く。
目を眇めて、光輝の中心を捉える。
跳躍の最高点で、刀を頭上高く振りかぶった。
(この亀裂さえ断ち切れば、この向こうに行ける)
そう分かっていた。
(この先にアカツキが居る)
心の奥でそう感じていた。
何故だか分かってしまうんだ。
理屈じゃなくて。
もっと…心の最奥から訴えかけてくる。
(…アカツキが俺を呼んでいる…)
振りかぶった刀を直下に振り下ろす。
全てをこの一撃に込める。
「らぁぁぁぁっっ!!!」
前を阻む光を叩き斬るように。
そして――真っ白な光の中を突き破った。