Fortunate Link―ツキの守り手―


体の一番熱い部分で触れ合う。

溶け合うほどに熱い。


ずっとこうしていたいと思うほどに心地良かった。

永遠に続けばいいと思った。


だけどずっとこうしている訳にはいかない。

やるべきことが、ある。


理性が昂ぶっていた心を静めた。

名残惜しさを感じながら、ゆっくりと顔を離した。


冷静に返り、相手のその反応を見る。
 
アカツキは目を見開いたまま、固まっていた。

見事な硬直っぷりだった。


それから瞬く間に顔を真っ赤にさせた。


「……な、な、な…」

面白いほどに動揺を浮かべ、水面近くの金魚みたいに口をパクパクさせていた。

なのに言葉がうまく出てこないらしい。

「……な、何しやがんだっいきなりっ」

睨んでくるけど、いまいち威力に欠けていた。


俺はその貴重な表情を拝んで、笑った。

そしてこう答えた。

「不運を打開するおまじない」



「……………は?」

アカツキは頬を紅潮させたまま思いっきり眉をしかめた。

意味が分からんと言わんばかりに。


「俺は絶対に負けないということだよ」

笑って答える。

唖然としたアカツキの表情を目に焼き付けて。


そして背を向けた。

振り返らずに歩き出す。


木刀を抜き、刃を露わにさせた。

意識は既に前方へと向かっていた。

心を落ち着かせ、集中させる。

イメージを自分の中に強く描き出す。


呼吸を整え、目的の場所に向かって一直線に駆け出した。

背後からアカツキの呼ぶ声が聞こえたが、足はもう止まらなかった。

< 534 / 573 >

この作品をシェア

pagetop