Fortunate Link―ツキの守り手―
颶風と岩がぶつかり合う。
凄まじい衝撃が刀を通して、手に腕に体に伝わってくる。
「……く…うっ……」
反動に全身が痺れた。
まるで体を引き裂かんばかりだ。
踏ん張るが、圧倒的な力が押してくる。
(……足り……なさすぎる…)
押される力に必死に耐えながら思う。
このままだと明らかに負けてしまう。
突破できない。
崩れ落ちてくる岩々に埋もれて終わってしまう。
(くそっ……)
削れ落ちてくる岩石の流れに、ずずずっと押し流される。
刀身を包む光が押し寄せる流れに翳り、弱まる。
(この先に行かなきゃならないのに)
自分の力の小ささを噛み締め、思う。
どうしてもこの先に行かなきゃならないのに。
どうししてもここから一緒に出なきゃならないのに。
そして…あいつに…
まだ伝えてないことがあるのに…。
けれど意志の力に反して、刀は押し戻されてくる。
その刀身までもメキメキッと悲鳴を上げていた。
折れそうなぐらい。
でも心だけは折れるわけにはいかない。
決して諦めない。
(……せめてもう少しもの力があれば)
強く願い思う。
その前で大きな音がした。
岩壁が大きく崩れ、こちらへとなだれてくる。
呑み込まんばかりに落ちてくる。
これではどうしようもできない。
いかに踏ん張ろうと。
(……万事…休すか)
眼前いっぱいに覆うそれを見て、さすがに終わりを悟った。
止めようの無い流れが目の前を包む。
その時。
パッと手元が一際明るく瞬いた。
まばゆい白さがそこにあった。
柄に自分のものではない美しい手が重ねられていた。
刀身が緑の輝きを取り戻す。
激しく強い力が注ぎ込まれる。
覆い被さる影を突き破って、光が突き進む。
『――そなたの覚悟、しかと見届けた』
そんな涼やかな音色の声が耳に届いた気がした。
同時に視界が眩しく開けた。