Fortunate Link―ツキの守り手―



「――シュン……シュン…」

何度も呼ぶその声に目を覚ました。


ゆっくりと開いた目を動かすと、すぐ傍にアカツキの仏頂面があった。

上から俺を覗き込んでいる。

誰かが泣いていると思ったのはどうやら気のせいだったらしい。


その向こうには青空。

汚れがさっぱりと洗い流されたような綺麗な青空が広がっていた。


そういえば、アカツキの泣いているところをまだ一度も見たことない。

でもその心がいつでも強いわけではないことを、俺は知っている。

きっと、この仏頂面も何か感情を押し殺してるせいなのかもしれない。


ゆるゆるとよく回らない頭で考える。

ぼんやりと思いながら、上にあるアカツキの顔を眺めた。

元気そうだ。良かった…


そこで、あることに気づいた。


「……お前」

目尻に残ったその跡を見つけてしまった。

「……泣いてる?」

信じられない気持ちで訊く。

アカツキはハッとした顔で固まる。

その反応が何よりも雄弁に肯定していた。


(……そういえば)

頬の上に何か濡れてる感触がある。

もしや…これは、零れ落ちた…


「泣いてねぇっ」

バシッッ!!!

いきなり顔面に張り手が飛んできた。

「うぶっっ」

踏みつぶされたような声が出た。

痛えっ。

鼻がじんじんするし。

こっちも涙が出てきた。


「…お前なぁ」

鼻面を押さえて、相手を恨めしく見やる。


でも。

何だか許せた。

ほっと心が緩む。

妙な気分だけど嬉しかった。

いつものアカツキを確認できた気がした。

< 539 / 573 >

この作品をシェア

pagetop