Fortunate Link―ツキの守り手―

俺は何とか残っている力を振り絞って言葉を紡いだ。


「――お前のせいなんかじゃない」


睨んでくる鋭い瞳の向こうの色が確かに見えた気がした。

本気で心配してくれてる、頼りなげな色。

その色を悟られまいと、必死に押し隠している。


(……そうか)

その目を見つめながら気づく。



俺も……、

…………隠していたんだな。



自分勝手に「守る」という言葉ばかり振りかざして…

その言葉の裏にこの大切な気持ちを押し隠してしまっていた。



今までの自分を顧みて思う。



いつも「守る」と言いながら、



本当は――、



――ずっとアカツキの傍に居たい。



ただ、そう思っていただけだったのに…。




俺は込み上げる気持ちを感じながら、アカツキを見つめて笑った。



伝えなければいけないことがあった。

口に出して伝えなければならない気持ちがあった。



今なら言える。


最後の気力を振り絞り、声に出して伝える。



「――お前のことがずっと…」



――――好きだから





それがちゃんと声になって伝わったかどうかまでは分からない。


揺れるようにあった意識が滲んで溶けていく。


体を支えていた力が抜けていく。

すっと目に映っていたアカツキの姿がぼやけて遠ざかる。


こんな肝心なところで力尽きるなんて、本当につくづく俺は駄目な奴だな。


でもこの気持ちは、決して消えることは無い。

いつだって胸の中にある。

だから、いつだって伝えられる。

目が覚めたらもう一度伝えよう。



傾く体が温かい腕に支えられた。

柔らかい感触に包まれた気がした。


その感触を最後に意識は溶けて消えた。


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