Fortunate Link―ツキの守り手―
最終話:幸せの在処
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山の上から、静かな風が吹き下ろしてくる。
瀬川蓮は桶と杓子と花を携え、小高い山の坂道を登っていた。
その先に一つのお墓があった。
そこに辿り着くと、先に誰かがお墓の前でしゃがんでいた。
黒いワンピースに身を包んだ一人の少女。
その少女――白石星羅は立ち上がり、蓮の気配を察して振り返った。
「星羅ちゃん」
蓮は振り返った彼女の名を呼んだ。
「まさか先客がおったとは、な」
「今日は姉さんの命日だから」
星羅はもう一度お墓を見つめて言った。
その墓石には『水波雅』という名が刻まれていた。
それから蓮に視線を戻し、複雑そうに表情を歪めた。
「この間は迷惑かけたわね…。
ごめんなさい」
星羅は頭を下げて、謝った。
「あれは仕方なかったことや。
防ぎきれんかった俺も悪かったし」
「いえ、私のせいよ。
…私が心の隙に入られてしまったから…」
星羅は視線を下向ける。
墓石の前――そこには透き通った赤のサイコロが置かれていた。
「姉さんの顔をしたあいつが学校に現れてから…、今まで思い出さないように目を背けてきたことが否応なしに気づかされた…。
私はずっと怖れていたのかもしれない。
姉さんは、家を出ていった私のことを最後まで恨んでいたのかもしれない、って」
「雅はそんな奴じゃねーよ」
蓮は強い口調で否定した。
「雅はいつあんたが家に帰ってきてもいいように水波家を必死で守ろうとしとった。最後の最後までな」
そう言って、蓮は星羅を睨むように見た。