Fortunate Link―ツキの守り手―

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この世界の森羅万象には流れがある。



人々はその流れを守るため、その流れの上流、中流、下流にそれぞれ一族ごとに住み、その流れが滞らぬように見張り、守った。

けれど、その流れの邪魔をする存在があった。

風のアヤカシ――風鬼である。

風鬼は目には見えなく、とらえどころのない流浪の存在であったため厄介だったか、
とある人々が、風鬼を人間に憑依させ、引き剥がすことで、風鬼の封印に成功した。
はぐれ者ばかりの集まりである彼らは風魔の一族と名乗り、長きに渡って風鬼を封印し続けた。

しかし、そんなある時。

風鬼は自らを封印する一人の女性に声をかけた。

己の子を欲しくないか、と。

その女性は風鬼を封印しているがゆえに、子を成す力を無くしていた。

彼女は悩みに悩んだが、とうとう風鬼の言葉を受け入れてしまった。
風鬼の封印を解き、その子を身に宿した。

全ては風鬼の思惑通りだった。

風鬼は目には見えない流浪の存在だが、人の子として生まれ変わることで、自らをこの世界に具現化し、目に見えるものとして存在し得ることができる。

そして、その存在の誕生により、森羅万象の流れに乱れが生じた。

流れの途中が遮られ、その流れの溜まりが出来てしまった。

しかし、世界の自浄作用により、その溜まりはその時生まれた一人の女の子に吸い込まれるように流れ込んだ。

彼女はその身のうちにある流れにより、強大な運気の持ち主となる。

代わりに、それまで、身の内に強大な流れを引き寄せていた、水波家の福宿しの巫女はその力を無くした。




乱れてしまったこの森羅万象の流れを元に戻し、この世界に平穏をもたらすこと。

――それが、そなたの役割である。



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