Fortunate Link―ツキの守り手―

香織は小さく笑って、

「そのつもりよ」

はっきりと頷いた。

「明月ちゃんは、俊が生まれたことによって、強運の持ち主となった。
だからやはり根源たる俊が彼女を守っていくべきだと思うの」

「なるほど」

「ところで、実際、俊と戦ってみてどうだった?」

香織は楽しげに目を細めて訊ねる。
翆は少し考えてから、

「身の内の風鬼を支配するにはまだまだだと思いますが…」

「ふふ。そうね。
でも風鬼にとっては誤算だったでしょうね」

「何が、ですか?」

「俊がアヤカシの心ではなく、人の心を持って生まれたこと、よ」

「確かに。
風鬼がアヤカシの心を持って、人の形で具現化されたら、ひとたまりもありません」

「そうね。
本当に、あの子が優しい心の持ち主で良かった…」

「………」

そこで香織は「さてと」と言って、

「私はそろそろおいとましましょうかね。これ、ほんのお礼の気持ち」

持っていた紙袋を手渡す。
翆は相変わらずの無表情で、それを断ろうとした。

しかし相手に強引に押し切られ、結局受け取るはめになった。

「あがっていかれたらどうですか」

「いえ。
後ろに次のお客さんが来てるようなので」

香織は後方をちらりと見て、にっこり笑って翆の申し出を断った。


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