Fortunate Link―ツキの守り手―

蓮はしばらく翆を眺めているだけだったが、やがて口を開いた。

「まぁ。お前が何を知っていて何を考えているのかは詳しく知らへんけど…」

呟いて、

「――あいつの『守りたい』っていう意志は、疑いようも無くあいつ自身のものだよ」

軽くスーツケースに凭れながら、言った。

「お前もそれを感じてるんやないんか?」


翆はちらっと蓮を見て、鼻を鳴らした。

「随分と肩を持つんだな。守谷俊のことを」


蓮は微かに笑む。

「別にそういうつもりはないけど」


ゆっくり、と真っ青な空に目を向けながら、

「俺は俺のことしか考えてへん。
なんかお腹いっぱいに青春をみせつけられたから、俺ももう一度前を向いて、最初からやり直そうかなぁと」

再び軽い笑みを乗せて、翠を返り見る。


「お前も、ちょいとは肩の力を抜いてみれば?」


しかし、翠は相変わらずの冷めた目で蓮を見るばかり。


「ま、そういうわけで。行ってくるわ」

明るく蓮はそう言って、手を降る。

「おい」

珍しくもあっさりと去ろうとするその背に、翠は声を掛けた。

「お前が目を掛けていた白石星羅とかいう女、お前が守っていた水波雅によく似ていたんじゃないのか」

蓮は立ち止まり振り返った。

そして不思議そうに首をかしげる。

「………それが?」

「――放っておくのか」

怪訝そうに訊く翠を見て、蓮は思わず苦笑した。

「野暮な事言うなよ。あいつと同じ奴は一人としておらへん」

少しだけその目に影がよぎった。

「まぁよく似てるのは認めるけどな。一途な性格とか特に」

言って、荷物を片手に持ち直す。


「……だったら尚更、シュンのことを諦めへんのとちゃうかな」

笑って、聞こえないほどにぼそりと呟いた。

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