Fortunate Link―ツキの守り手―






「……はぁ。
なんで、こんな格好しなきゃいけないんだか」


俺は深々と溜め息を吐いていた。

人生で初めて、タキシードなるものを着てしまった。



「いいじゃない。
とってもよく似合ってるわよ」


そう言いながら、ロビーへと続く大階段を優雅に降りてくるのは――、淡いピンクのカクテルドレスに身を包んだ白石さんだった。

胸元には煌びやかなネックレスが燦然と輝いている。

それらが嫌味なく似合ってしまうあたりが、彼女がお嬢様たる所以なのだろうか。


「お世辞はいらん」


「あら。本気で褒めたつもりだったのに」


そう言いながら、俺の前に立ち、手を伸ばしてくる。

その手は慣れた手つきで蝶ネクタイの歪みを直してくれた。


「ほら、可愛い」


言ってふふっと微笑む。


「……からかわれてるとしか思えないんだけど…」


「こういうことは素直に受け取るべきよ。

――って、そんなことを言ってたらほら。
あなたが一番褒めてあげなきゃいけない人が来たわ」


白石さんは、今しがた自分が降りてきた階段の上を指し示して微笑んだ。

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