Fortunate Link―ツキの守り手―
「大変だな。お嬢様っていうのも」
珍しくアカツキがそんなことを言った。
「そうかしら?
月村さんはそういうのになりたいとかいう願望は無いの?」
「全然。
あんな愛想笑いばかり作って社交辞令吐いてたら、顔面筋肉痛になりそうだしな」
にべもないアカツキの言葉に、白石さんは頬を引き攣らせた。
「そう。
でも愛想笑いの一つも作れなければ、大人になってから生きていけないわよ?」
まるで龍と虎のような二人の間に静かなる炎が立ち始めたところで、
「――お嬢様」
白石さんに声を掛けたのは、黒スーツ姿の数人の男達だった。
「ちょっとよろしいですか」
男達は難しい顔を突き合わせて何だか物々しい様子だ。
「わかったわ」
白石さんは頷き、俺達の方を振り返る。
「ごめん。ちょっと外すね」
そう言うと、男達に連れられてどこか奥へと姿を消した。