Fortunate Link―ツキの守り手―
*
俺達は白石さんに連れられ、パーティー会場であるホールから出て、その隣にある部屋へと移動した。
小さな会議室のような部屋で、今は俺達と黒スーツ姿の男五人ほどだけで、他には誰も居なかった。
「――パーティー会場にこんなものが届けられていたらしいの」
白石さんはそう言って一枚の紙を机に広げた。
そこには切り貼りされた文字が、大きさもバラバラに踊っていた。
「……これは…」
俺とアカツキはそれを覗きこみ、読む。
「――月に告ぐ。
太陽の上。赤い光が灯る港。その後方にて爆弾を仕掛けて待つ。
18時までにそこに来なければ、この船を……爆破する?!」
俺はハッと息を呑み、白石さんの方を見た。
「…これは……」
「…理由や目的は分からないけど、内容だけを見るに犯行予告のようね」
「おいおい…。
………まじかよ」
「さぁ。分からないわね。
タチの悪い悪戯かもしれないし……。
……でも」
白石さんは深々と息を吐き、呟いた。
「届けられた以上、犯行の可能性は否定できない。
でも港に着くまで、まだ時間が掛かってしまう。
となると、混乱を避け、最小限の人員で皆に気付かれないように捜索するしかない」
(……最小限)
「……つまり」
俺は部屋に控える黒スーツの男達の方を見やって言った。
「この予告状について知っているのは俺達と、そこに居る五人だけってことなのか?」
「そうよ」
白石さんは頷いた。
「…無闇に情報が広がるのは避けるべきだと思って、私が口止めしたの。
船みたいな隔離された場所で起こるパニックほど怖いものは無いわ」
「…そうかもしれないけど…。
さっきの…その、お父さんとかにも言ってないのか?」
「言ってないわ。
滞りなくパーティーを進めて貰う為にも、お父様にはあの場に居て貰わなくちゃいけないし。
それにあの人がこのことを知ったところで、悪戯だと言って笑い飛ばすか、一目散に逃げるか、のどちらかでしょうからね」
白石さんは嘲笑うように言った。