Fortunate Link―ツキの守り手―
「……いやいや。ちょっと待って」
「お前、私を守るって言ったよな?」
「……いや。言ったけど。
さすがに爆破から守るのは物理的に無理というか」
「言ったよな?」
「いやいや。
そういうお願いするなら、俺じゃなくて未来から来たアンドロイドか全身機械化されたサイボーグ警官にしてくれない?」
そんなやり取りをしつつ、ふとあたりのようすに気づき、立ち止まる。
「――って、いつのまにか客室のとこまで上がってきちゃってるじゃん」
道理で静かだなと思ったら。
「そうだな」
「もしかしてこの膨大な客室の中に例のこの紙に書かれた場所があるのかもしれないのか…」
「可能性はあるな」
「……まじかよ。
あと一時間しか時間ないってのに」
「なんか赤っぽい色の客室が怪しいんじゃないのか?」
「ああ。なんか赤い光が…とか書いてたから?
いくらなんでも単純すぎやしないか」
「文章が分からん以上、片っぱしから思い当たる場所を探すしかないだろ」
「いやいや。そうは言っても客室はちょっと。プライベート空間に勝手に乗り込むのはいかんだろ」
「…あ。
なんかあの部屋、中が赤っぽいぞ」
アカツキは人の忠告を無視して、扉が開けっ放しになっている部屋を指差した。
「確かに赤い壁が見えてるけどもだな…」
「行くぞ」
アカツキは俺の服を引っ張りながら、部屋へと駆けだした。
「おい。だから勝手に人の部屋に入っちゃいかんて。って聞いちゃいねぇし」
俺はアカツキに引き摺られるがまま、部屋の中へと入ってしまっていた。