水の国の王子様は従者を溺愛中!
「…とにかく……リディアが嫌な事は絶対にしないから…そこは安心して欲しい」
「うん…」
少しギクシャクしながら私達はシャンプーで髪を洗い、石鹸で体を洗いカイ様が出してくれたお水で体を洗い流した。
まさか人生でカイ様と一緒にシャワーを浴びる事になるなんて思ってもみなかった…
シャワーを終えるとパジャマは用意がないのでタオルを巻いて一緒にベッドへと入った。
昨晩だって裸で一緒に寝たけど、ベッドに場所が変わるだけでもドキドキして仕方ない。
「リディア」
「はい…」
「明日からの事なんだけど、俺はライマーレ国へ嫁いだアクアヴェール王族の安否を確かめに行こうと思う。なかなかアヴァンカルドへ迎えなくて申し訳ないが、リディアはここで待っていてくれないか?食堂の店主に水を分け与えれば俺が戻るまでの間リディアの宿と食事は用意してくれるはずだから」
「え…だったら私も一緒に…」
カイ様は私の頭をポンポンと撫でる。
「アクアヴェールがあんな事になったんだ。リディアを危険な目に遭わせたくない…ここは城下町だから被災してるとはいえライマーレの中心部だから復興も早く、敵軍の中といえどアクアヴェールの国民だとわからなければ安全だろう。それにライマーレは交通の便がとても良いんだ。そんなに時間は掛からないよう戻ってくるよ」
私は同じベッドの中のカイ様との距離をつめて耳打ちした。
「………絶対嫌です。私はカイ様の従者ですよ?アヴァンカルド王国へ着くまでどんなに危険だろうとカイ様の近くでお守りします…カイ様はとても頼りになりますが、意外と危なっかしいのですよ?」
「しかし…」
今度は耳打ちを止めてカイ様の手を握る。
「ルーク(カイ様)は私を絶対守るって言ってくれたよ?遠くにいたら守れないでしょ?それにこんな状況下だもん…ルークの傍にいる事が私の心の支えでもあって離れたくないのに、ルークは違うの…?」
どうしても置いて行かないで欲しくてそう言うとカイ様はなんと私をぎゅっと抱き締めた。
「……リディアはズルいな…分かった。俺も本心ではリディアと離れたくないんだ…でもリディアがそう言うなら一緒に行こう」
するとカイ様は私の額にチュッとキスをした。
「ヘッ!?おでこにキスしたぁ…」
「ふっ…夫婦なんだからこのくらいするだろ?もっと夫婦っぽい事する?」
カイ様はからかうようにそう言う。
「しま……しませんっ…!もうっ…からかわないでよ」
「ごめんごめん、反応が可愛かったからつい」
「男性経験…ないんだもん…」
学生時代はカイ様の熱烈なファンで他の男の人は全く視界に入ってこず、お城での仕事場はみんな親みたいな歳の人達ばかりだったから一切なかった。
「リディアはこんな可愛いのに不思議だ…俺も今まで恋人が出来た事ないから同じだよ」
確かにカイ様に恋人がいたという情報は一度も聞いた事がなかった。
こんなに格好良くて、人想いで優しいし王子様で絶対にモテるのにどうしてだろう?
「どうして作らなかったの?モテないわけないのに…」
「兄や弟は学生時代その辺も上手くやっていたみたいだけど…想い合って恋人が出来たとしても俺は次男だから将来的には国に有益な結婚をする事になる。その時恋人がいたら恋人を傷付けるし、俺も辛くなるから敢えて作らなかったんだ」
「そうだったんだ…ルークはいつでも人の事優先して考えてくれて…とても優しいから例え国の有益の為に結婚したとしても相手になる方は幸せ者だね」
「……そんな事ない…そう思ってくれるならもう国のことなんて考えなくてもいいわけだからリディアが俺と結婚する?」
「……へ!?」
「ごめん……なんでもないよ。もう寝よう…おやすみ」
カイ様はそう言って反対側を向いて眠ってしまった。
さっきの質問は……
いやいやいや…話の流れで冗談で言っただけで本気なわけがない。
一瞬間に受けちゃった…危ない危ない…