水の国の王子様は従者を溺愛中!
「今のライマーレ軍の怒りを買えばこの辺りもライマーレ国内であってもアクアヴェールの二の舞になりかねませんから…親戚が殺されてしまった事には心を痛めてますが、アクアヴェールの王族を慕っていたくださった住人の皆さんがご無事で良かったです」
カイ様はご婦人が泣き崩れるのを肩をさすって慰めた。
「……貴方は奥様とは」
「従兄弟です。嫁ぎ先の旦那様が気さくな方でしたので何度かこちらへ来た事があります…きっとその時に見掛けられたのでしょう」
「そうだったのね…今この辺りは御屋敷の見せしめで軍がウロウロしているから貴方の奥様が回復するまでうちで休んでいってちょうだい」
「申し訳ない…僕を匿う事は危険なのはわかっていますが、少しお世話になります」
「奥様の従兄弟って事なら力になりたいからゆっくりして行くと良いよ」
「ありがとうございます…ふッグッ…」
カイ様の従姉妹の方が周囲の住人を大切にしてくれた事が回って助けてもらえる事になったと思うと…あんな酷い殺され方をされた事が悔しくてまた涙が出てしまう。
「リディア…」
「ほら、奥さんに着いててあげな!私は隣りのキッチンで夕食の支度するから」
カイ様は私の方へ戻ると私の傍らに座り、私の頭を撫でる手が震えているのが分かる…
私は起き上がり、すぐにカイ様を抱き締めた。
「な…」
「……私ばかり泣いてしまってごめんなさい……今は誰も見てないから…」
「駄目なんだ……一度気を緩めると……俺は……」
「ずっと気張ってくれてたんだもん…気を緩めても大丈夫だよ」
そう言うとカイ様は私の体を抱き締めて静かに泣いた。
その後、匿ってくれたご婦人の旦那さんが帰ってきてご婦人が説明してくれると御屋敷の奥様には感謝していると親戚であるカイ様と共に歓迎してくれた。
ご婦人がまだ食欲が戻らないだろうとミルクで作ったシチューを用意してくれて、それがすごく美味しくて体調もだいぶ良くなった。
「王族の方へとても失礼なんだけど、来客用のベッドがシングルのものしかなくてごめんなさいね」
「いえ、充分ありがたいです。とても良くして頂いて感謝しかありません」
カイ様はそう言って部屋に案内してくれたご婦人に笑いかけた。
「…アクアヴェールの王族は男性もとても綺麗だわ…奥さん、旦那さん誰かに取られないように気を付けるのよ!」
「えぁっ……えっと……」
どうしよう、夫婦のらふりしてるのに反応に困っちゃう…
「ふはッ…僕は妻一筋なのでご心配には及びませんよ」
カイ様はそう言って私の腰を引き寄せた。
はぁ………本当にカイ様と夫婦でこんな事言われたら幸せだろうなぁ…
「まぁ!仲が良くて羨ましいわぁ!私達の寝室離れてるから安心して仲良く過ごしてっ」
そう言ってご婦人は部屋を出て行った。