水の国の王子様は従者を溺愛中!
カイ様の寝顔を見てるのは飽きなくてしばらく堪能していると、カイ様が目を覚ましてしまった。
「んZzz……朝か…」
「カイ様、おはようございます」
「おはよう…あれ…リディア先に起きてた?起こしてくれたら良かったのに」
「えっと…まだ目覚まし前ですし…」
「体調どう?良くなった?」
「はい…もうすっかり」
まだちょっと眠そうな顔をしているカイ様も可愛い…
「…敬語…何で従者のリディアなの?」
「なんとなく…です…」
少しでも自主規制しておかないと、この偽りの夫婦生活が終わったら離れ難いとか思ってしまうし、自分の気持ちにブレーキかけなくちゃ…
そう強く思ってベットから起き上がると、カイ様も一緒に起き上がって私の体を抱き寄せた。
「駄目。ライマーレにいる間は俺達夫婦だよ…二人だけの時も夫婦でいないと夫婦らしく振る舞えないだろ?」
カイ様がそう言うと唇が近付いて重なる。
そんなの拒めるわけがなくて、カイ様の寝巻きをギュッと掴んで受け入れてしまう。
学校や町で夢中になってキスをしている恋人達を見てどうしてあんなに夢中になれるのかよく分からなかったけど、今なら分かる。
口付けが深くなるともっと夢中になってしまう。
キスって……こんなに気持ち良かったんだ…
キスをしながらカイ様の手が私の寝巻きのボタンを外し始める。
嘘……キス以上の事も……?
ジリリリリッ!
目覚まし時計がすごい音で鳴って私達はパッと離れた。
「ごめ…つい……夢中になり過ぎたね…」
「ううん……ライマーレの目覚ましの音すごいね…」
急いで目覚ましを止めて、私達は黙って支度を始めた。
私はカイ様の事好きだから拒めないけど……カイ様だって男の人だから異性といるとこういう事したくなっちゃうのかな…
変な期待したら駄目……
ご婦人は朝食も用意してくれて、私の体調もすっかり良くなったのでしっかり食べる事が出来た。
「ご婦人…水路を見せて頂いても構いませんか?」
「あぁ、構わないけど…他のライマーレの人には…」
「はい、それは必ず守ります。絶対他言致しません」
ご婦人は奥の部屋で何かを押すと本棚が動いて、階段が出てきた。
一見すると普通の本棚なのにこんなすごい仕掛けが…
母国を滅ぼした国だけど改めてライマーレの電気を利用した技術はすごい。
そして階段の下に行くとご婦人は更に隠されている井戸を見せてくれた。
「御屋敷の旦那様が循環させる装置を設置してくれて奥様が定期的に井戸に水を流してくださっていたけど、もう亡くなられてしまったのでいつまで持つかは…」
するとカイ様は手の平に水の力を込めて井戸の中へ放つ。
「少しですがコレで足しにしてください。ライマーレの水不足すぐには難しいけれど、僕が必ず解消させます」
「そんな…うちの国はアクアヴェールを滅ぼしたのに…ライマーレが憎くないのかい?」
「母国をあんな目に遭わせた事恨んでます。でも、それはライマーレ軍の…ライマーレ王家の行いです。ライマーレの人だからと一括りには考えたくない。ここの国の方には僕達が困っている時手を差し伸べてもらいました…恐らくこの水不足で王族は勿論、ライマーレの多くの国民が苦しむ事になる。ライマーレの事は憎いけれど、国民が苦しむ事は望んでいません」
すると、ご婦人はポロポロと涙を流した。
「……王族は本っ当に馬鹿だよ………二人とも…アクアヴェールが無くなってしまってこの先辛い事が沢山あると思うけど……頑張って生きるんだよ……」
「……はい」
「これからここに来られる事があるかわからないけれど…もしまた来られる事があれば歓迎するからね…貴重な水もありがとね…」
「僕達を匿うなんて危険な事してくださって本当にありがとうございました…どうかお元気で…」
私達は外の様子を確認して、お世話になったご婦人のお宅を後にした。