水の国の王子様は従者を溺愛中!


私達はまずアクアヴェールへ一番近い城下町へ戻る事にした。

長時間あの乗り物に乗ると、行き程ではないけれど城下町へ着く頃にはまた乗り物酔いで具合が悪くなってしまう。

駅にあるベンチに座ってカイ様が私の背中をさすってくれる。

「大丈夫…?辛い思いさせてごめん」

「ううん…私の方こそ全然慣れなくてごめんね……昨日よりは調子良いから…」

「無理しないように行こう。城下町を出る前に一度また食堂の店主を訪ねて休ませて貰おうか」

すると、突然駅の近くの大きな建物の壁が光って人が映し出される。

「な、何あれ…」

「あれは映像っていって今国内で起きている出来事をみんなに知らせくれる機械だよ」

そんな事まで出来るなんて…

「たった今入ったニュースです。我がライマーレはアヴァンカルド王国へ滞在しているアクアヴェール王族を全て排除する事に成功しました。これによりアヴァンカルド王国はライマーレ王国からの出入りを一切禁止し、元アクアヴェールとの国境へ規制線を張った模様です。国民は国境付近には近付かないようご注意願います」

アヴァンカルド王国とアクアヴェールは親交国であり、両王族同士の子供は必ず片方ずつのフォースを持った子供が生まれる事からアヴァンカルド王国へ嫁ぐ事は珍しくない。

アヴァンカルド王国にいるアクアヴェールの王族は安全だって思ってたのに。
そこまでしてアクアヴェールの王族を滅ぼしたいの?

つまり……アクアヴェールの王族はカイ様しか生き残っていないって事……?

私は隣りで俯くカイ様の手を握った。

「……アヴァンカルド王国にいる人まで……酷い……」

「リディア……悔しいけど……ライマーレを出るまではアクアヴェールの事は触れないようにしよう…誰が聞いてるか分からないから」

「……はい」

カイ様は私が握った手をギュッと握り返す。
私達は黙ったまま食堂へと向かった。


そして、食堂に着くとまた不幸な出来事は続く。

食堂の扉は壊れていて閉鎖されている。

「すいません、ここの食堂…どうしてこんな…」

私は道行く人に訪ねた。

「ここね、町で一番繁盛してたけど昨日の夜強盗に入られて…居合わせた客もろともね…。もうこの辺りの治安は良くないからあなたも気を付けなさい」

改めて周りを見るとあちこちで怒号が飛び交っていて、露店で売っている水の値段もかなり高騰している。

しかも売られている水も何だか濁ってる。

すると、カイ様は私の手を繋いで耳打ちをする。

「……休ませてあげられなくてごめん。すぐ町から出よう。ここの町中で野宿になったら危険過ぎる。絶対俺から離れないで」

カイ様に手を引かれて町の出口へと向かうと、何処へ向かうか分からないけれど結構な人数の人が町を去っている。
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