水の国の王子様は従者を溺愛中!
帰還
町を出た私達は、また枯れた木々が生い茂る元々森だった道をアクアヴェールへ向けてひたすら歩いた。
3日前よりも地面はひび割れていて、干ばつが激しくなっている。
日が暮れる前に前は川が流れていたであろう場所に小さな橋があり、その下で野宿をする事にした。
「辛いかもしれないけど、少し休んだら夜のうちに進もう。この森に食べられる物はないし、アクアヴェールまで水以外口に出来ないからね…国境付近にアヴァンカルド王国の兵士が張ってるなら食料を持ってるはずだから」
「ん……アヴァンカルド王国行ったらもう大丈夫なのかな…?カイ様が生きてたってわかったらまたライマーレが襲ってこない…?」
「俺の事は大丈夫だよ、昨年戴冠した国王とは歳が近くて俺とは親交が深いんだ。しっかり今後の事話し合うよ。リディアの事も……」
「うん…?」
「いや………向こうに着いてからの事は俺が何とかするから心配しなくていい」
「わかった……私は…元々補償された移住と引き換えにアヴァンカルド王国の貴族と結婚の話があったから…きっとそこに行く事になると思う…」
「……そうだったんだ……相手が貴族ならこれからの暮らしに困る事ないな……少し仮眠を取ろう。まだ先は長いから」
「……うん」
すごく歳の離れた男性との結婚…私にはもう何も無いからきっとそれしかこの先、生活する術は無い。
カイ様は私の肩を抱き寄せてくれる。
このままカイ様と一緒にいたいけど…そんな事絶対叶わない…
「カイ様……おやすみのキスしてくれないの?ここまだライマーレ国内だよ…?」
そう言うとカイ様はすぐにキスをしてくれた。
多分…最後のキスだ。
もう一生こんな夢みたいなキスをする事はないんだろうな…
一度唇が離れてもう一度すると、涙が溢れてカイ様はそれを指で拭ってくれる。
そしてカイ様と寄り添って目を閉じてアクアヴェールへ向けて進むために仮眠を取った。