水の国の王子様は従者を溺愛中!
深夜。
仮眠を取った私達はまだ暗いうちにアクアヴェールへ向けて出発した。
アクアヴェールへ近付くにつれて気温が下がってくる。
アクアヴェールの気候は平均気温20℃前後の過ごしやすい気候でここまで寒い事はなかった。
「冷えるな…リディア、体冷やさないようにブランケット使って」
「ありがとう…」
ブランケットを肩から掛けてもらうと、カイ様は顔を隠す為に持ってきた上着を羽織った。
「ライマーレの気候に変化があったようにアクアヴェールも変化したのか?」
暑い中歩き続けるよりはマシだけど、気温の差が激しくて寒い…
そしてようやくアクアヴェールの国境の近くへと辿り着いた。
国境付近ではアヴァンカルド王国の兵士が見張っていて、ライマーレ方面から来たであろう国民を追い返しているのが遠目に見えた。
ライマーレから逃げて来ようとした人結構居るんだ…
故郷なのに全然違う場所みたいに思える。
「…これ、アクアヴェールに入れる?」
「向こうの兵士なら俺の顔見せれば入れてくれるはず…アヴァンカルドの兵士武器持ってるから話着くまでここで待ってて」
カイ様はそう言うと繋いでいた私の手を離した。
「あ……」
「ん?大丈夫…アクアヴェールに入ったらすぐにリディアのご家族の安否も確認しよう」
すると、カイ様は最後にチュッとキスをしてくれた。
「ここまで俺に着いててくれてありがとう」
「私の方こそ…守ってくれてありがとうございました…」
「それじゃ…行ってくる」
カイ様はアクアヴェールの国境にいる兵士のいる方へと進んで行った。
それを見守っていると、カイ様は立ち止まる。
…どうしたんだろう?
そして走って戻って来ると突然抱き締められる。
「えっ?どうされたんですか!?」
「ごめん………俺があそこに行けば俺達二人この先の暮らしが補償されるのはわかってる……でも……やっぱりリディアと離れたくない…こんな気持ちになるの初めてなんだ…」
「あ…あの……私も…カイ様と離れたくないです……でも…カイ様は…アクアヴェールで唯一生き残った王族で…」
「リディア…こっちへ」
カイ様は私の手を引いて、アヴァンカルドの兵士のいない方へと歩き出した。
手引かれるがまま着いていくと、もう使われていないボロボロの物置小屋があってそこへ入る。
するとカイ様は手馴れた様子でそこの床下を開けた。
「ここはアクアヴェール城へ繋がってる。来て」
床下へ下りると外がボロボロなのが嘘のように中はアクアヴェールのお城の壁と似た作りになっている道が続いている。
「ここは城への抜け道になっていて、何かあればここから出入り出来るんだ。襲撃の時使う余裕なく終わったけど…」
「こんな道が……」
「ここから王族の力がないと城には入れないんだ」
そう言うと閉まっている扉に不思議な仕掛けにカイ様が手をかざす。
水の音が鳴って扉が開いた。
扉の中へ入ると地下シェルターのような場所だ。
「こっちの扉は城内で、ここからはアヴァンカルドとアクアヴェールの町へ続く森へ出る道に繋がってる」
カイ様は私の手を握った。
「リディア…俺はリディアの事が好きだ。この先、王族である事を伏せて暮らす。地位も名誉も無くなるから贅沢な暮らしはさせてあげられないかもしれないけど、この先リディアとずっと一緒にいたい。俺が勝手に決めた事だから振ってくれても構わない。ここからなら兵士を通さなくてもアヴァンカルドの嫁ぎ先へ行く事も出来る…どうするか選んで欲しい」
私はカイ様の目を見た。