水の国の王子様は従者を溺愛中!
カイ様の告白には驚いた。
だって……カイ様が私の事好きになってくれるなんてそんな奇跡が起きてしまったのだから。
特に今の状況じゃ、カイ様がアヴァンカルドに保護してもらうなら水のフォースを絶やさない為にそれなりの相手と結婚する事になる。
だから…私とカイ様が結ばれるのに一番手っ取り早いのはカイ様が王族である事を隠して一般人になる事だ。
でも…王族としてアヴァンカルドへ行けば今後カイ様は不自由の無い暮らしが出来るはずなのに…
「……カイ様はこれから王族として暮らすという選択はないのですか?」
「無い…もしリディアに振られても俺はこの先アクアヴェールの王族である事は伏せて暮らす…ライマーレが行った事は許される事では無いけれど俺の同族が放った呪いの罪も重い…アクアヴェール王族の存在は憎しみを連鎖させるだけだから…何も無い俺には何も魅力無いから同情とかはしなくても大丈夫だよ」
カイ様は私に振っても良いよと言わんばかりに私の背中に手を添えて切ない表情でそう言った。
「……カイ様の……カイ様のファン歴15年舐めないでください!私は王子様のカイ様じゃなくてカイ様のファンなんです!カイ様の完璧そうで完璧じゃないところが可愛くてキュンとするし、自分の方が辛いのに人の事ばかり優先しちゃう優しいところとか、素直なところとか…もう言いきれないくらい魅力だらけのカイ様の事が大好きです!」
するとカイ様の目から涙が零れて、カイ様は慌てて手で押さえて涙を拭った。
「ごめ……そんなに自分の内面の事褒められる事無いから……そのファンっていうのはさ…恋愛的な好きとは違うんだよね…?兄上と弟にそういう女性結構いたけど…」
「恋愛的な好きでは無いというわけでは無いですけど…遠い存在なので相手から見てもらえるわけないので実際恋愛にはならないですし、遠くから見守るというか…」
「王族じゃなくなった俺とリディアは遠い存在じゃなくなって、俺はリディアの事愛してるんだけどそれってどうなるの?」
「そんなの……想像したことなかったですけど…でも、私の今の気持ちは…暮らしに不自由しない貴族にお嫁に行くよりも、どんなに大変でもカイ様とずっと一緒にいたいです」
そう言うとカイ様に抱き締められる。
「…本当にいいの?俺、何もないよ?」
「はい…そんな事言ったら私も何もありません」
「そしたら何もない二人で1からだね……何もないけどさ、俺この先何があってもリディアの事守るから」
そう言うカイ様の背中に手を回して私もカイ様をギュッと抱き締める。
「私もこの先カイ様の事守ります」
「ありがとう…まずは恋人になろうか。ちゃんと生活出来るようになったら改めて結婚のプロポーズをさせて?」
カイ様は抱き締めている腕を緩めると私の手を握った。
「はいっ!でも、待ちきれなかったら私からプロポーズしちゃうかもしれないです」
「ははっ!それは俺からさせてよ……もう敬語も名前に様も要らないよ」
「そっか…」
「もう王族の人生ではないわけだし、名乗る名前も変えた方がいいな。リディアはどんな名前が良いと思う?」
「えぇっ?えっと…折角ご両親に頂いた名前は少し残して欲しいから…そうだなぁ。カイル・コールマン…?」
「そうか…うん、そしたら俺はこれからカイル・コールマンって名乗る事にするよ」
「そんな簡単に決めちゃっていいの!?一つの候補じゃないの!?」
「良い名前だよ。リディアがつけてくれたってだけでも嬉しいし、気に入った!これからは俺の事カイルって呼んで欲しい」
「わかった……カイル」
「ふふっ……うん」
カイルは嬉しそうに答えるとチュッと私にキスをする。