水の国の王子様は従者を溺愛中!
「カイル?ここの部屋…何かあったの?」
「いや……あの日、ここのサロンで弟のブライ……ブライアンがブライと残りたいって言ってアヴァンカルドへ移住しようとしないメイドや貴族の女の子達をブライが説得してたんだ。この惨状見る限りブライはここで殺されただろうな…」
この部屋も遺体はもう無いけれど、壁や床には沢山の血痕が残っていた。
「そういえば…カイルの事いたぶったライマーレ軍の一人がブライアン様は女の子を庇って亡くなったって…」
すると、カイルは涙を流した。
「…ブライは思春期に入ってから女の子とばかり一緒にいて俺から見ても女好きだなとは思ったりもしたけど……小さい頃から最近も変わらず俺の事慕ってくれてて…可愛い弟だった……あぁ……駄目だな……俺……泣いてばっかりだ…」
私は涙を流すカイルを抱き締める。
「泣いて良いんだよ…こんな惨劇を経験したんだもん…これから二人で支え合っていこ?」
「…ん……そうだな……リディアとこの先生きていくっていう希望が出来たし…前向いて頑張るよ…」
カイルは少しの間泣いて、すぐに離れて私の手を引いてサロンを後にした。
そして調理場へと辿り着いた。
調理場は襲撃の時にライマーレ軍も居たのか損傷は少なそうだけど、食い荒らされていて鍋に残っている物はカビが生えている。
調理された物は数日経ってるし流石に食べられないよね…
置いてある野菜も干からびていて食べられそうになかった。
カイルはティーセット用の棚を開けて何かを探している。
「あった。腹の足しにはならないかもしれないけど、糖分は摂っておいた方がいい。口開けて」
私はカイルに言われて口を開けると、口の中に甘い物が入ってきた。
「ん…角砂糖?」
「そう。流石に誰も手付けてなかったみたい」
カイルもシュガーポットに入っている角砂糖を口に含んだ。
何も食べていなかったせいか、ただの砂糖だけなのにすごく美味しく感じる。
「あとは…調味料は残ってるけどな…」
「うーん…そうだ、王族の食事に干した物とか漬けた食べ物って無かったかな?」
「漬けた物ってピクルスとか?それなら副菜でよくあったけど…」
「そしたら何処かに保管か漬けてる場所とかあるんじゃないかな?」
「…そうだ!確かこっちに」
カイルは調理場の奥へ行くと床に取っ手の付いてる部分があり、それを引っ張った。
すると、そこは床下収納になっていて瓶や容器が沢山入っていた。
「わぁ!カイル、調理場の事もよく知ってるんだね!」
王族は調理場とかには行かないものだと勝手に思い込んでた。
「いや…子供の頃よくつまみ食いしに来たり、調理してるところ見たくて来てたんだ…兄上と、かくれんぼして遊んだ時にここ見つけて中に隠れてたら密閉されて死にかけた事があってよく覚えてたんだ…」
「えっ…」
「それ以降俺だけここは立ち入り禁止になったけどね」
「その時助かって良かったけど…結構やらかしてるんだね」
「子供の頃の話だから…とりあえず全部中身チェックしよう」
瓶や入れ物の中身を見ると野菜を漬けた物や、ビーフジャーキーや海鮮類を干した物が出てきた。