水の国の王子様は従者を溺愛中!
ローティシア
「人が足りなくてなかなか手が空かず、すいませんー!ご要件は?」
「僕達、アクアヴェールからの難民なんですが…何処か働く場所ないでしょうか?出来ればどんな所でも構いませんので夜眠れるスペースもあれば良いのですが…」
「それは大歓迎です!是非とも役場でと…言いたいところなのですが、役場は従業員に泊まれるスペースを用意出来ないので宿屋を紹介します!町に1軒温泉付きの宿屋があるのですが、この気候なので温泉が大盛況でして…宿屋ですし恐らく泊まれるスペースくらい確保してもらえるかと」
「わかりました、訪ねてみます。余裕が出来たらこちらの方の仕事も手伝わせて頂きますね」
「助かります、宿屋の方へは役場から照会を受けたとお伝えください!もし駄目だったらもう一度来てください」
そう言われて私達は宿屋へと向かった。
宿屋は町の奥にあって、町の中で一番大きな建物だった。
中へ入るとフロントにはなぜかイーストサイドの宿屋にいたご主人が座っていて私達が入ってくるとすぐに
立ち上がった。
「お客さん?今日はもう部屋も温泉も満員で入れないよ!」
「僕達、客ではなくアクアヴェールからの難民でして…役場で仕事の紹介を受けて来たのですが」
「アクアヴェールからの難民?ライマーレから酷い襲撃にあったんだろう?大変だったね…うちは嫁と二人しかいないから助かるけど、難民って事は寝泊まりする場所もだろ?客室はいつも足りないし、二人をちゃんとベッドで寝かせてやれる場所がなぁ…別に家借りてやりたいけどまだ借金あるからそんな余裕ないしなぁ…」
ご主人は私達の為にすごく考えてくれる。
よく見るとイーストサイドにいたご主人様と似ているけど、雰囲気が違う?
「外でなければ物置部屋とかでも構わないのですが…」
「えぇ…物置部屋はあるにはあるけど…一応見てみるか?」
ご主人に案内されて、2階の一番奥にある物置部屋へと案内される。
中は清掃用具や備品等が置かれている本当に物置部屋といった場所。
一応暖炉はあるみたいだ。
「…やっぱりこんな部屋じゃ働いてもらうのに申し訳ないな。兄ちゃん、元貴族とかだろ?妙に品があるから俺にはわかるんだ。こんな部屋じゃ…」
「いえ、ご主人が構わなければこちらでお世話になりたいのですが」
「でも、ほら姉ちゃんだってこんなところ嫌だろ?」
「私もご迷惑でなければ…私達、何も持っていないので雪を凌げる場所と仕事を頂けるだけでとても助かります」
「うーん…それじゃ、ここを二人で自由に使ってくれよ!働いてくれりゃ給料はちゃんと払うから金が貯まれば家も建てられるだろ」
「ありがとうございます、お世話になります」
「ありがとうございます!一生懸命働いて…痛っ」
冷え切ってジンジンしていた足の指先が室内で少し温まったのか感覚が戻ってきて足先が痛みだした。
「リディア?何処か痛む?」
「足先が冷えてたからちょっと…でも、大丈夫」
「その靴雪に対応していない靴じゃないからしもやけにでもなっているんじゃないか?軟膏を持ってくるよ、今日は長く歩いて疲れてるだろうからこんな所だけどゆっくり休んで明日から頼むよ!」
宿屋のご主人はそう言って軟膏を取りに行ってくれた。
「お言葉に甘えて今日は休ませてもらおう?今暖炉点けるから」
カイルが暖炉を点けてくれている最中に靴と雪で濡れてしまった靴下を脱ぐと足先が真っ赤になって腫れている。
これがしもやけ?なのかな?
アクアヴェールでは雪が振ることがなかったのであまり馴染みがない症状だ。
「こんなに赤く腫れて可哀想に…しもやけにはマッサージが効果的だって聞くから少し足先触るよ」
カイルはそう言って腫れた足先を優しくマッサージしてくれる。