水の国の王子様は従者を溺愛中!
帰還に向けて
こんなの戦争じゃない……ライマーレはアクアヴェールを大量虐殺したんだ…。
カイ様の声が聞こえた部屋から男が二人、気を失っているカイ様を二人で運んで部屋を出て私がいる方とは反対の方へと進んでいく。
家族の安否の確認とかやらなくてはいけない事が沢山あるのは分かっているけど、カイ様をこのままライマーレへ連れて行かせたくない気持ちの方が強くて、私は奴等の後を追った。
私が行ってカイ様を救う事が出来るのかなんてわからないけれど、私の生き甲斐になっていたカイ様を放ってはおけない。
奴等に着いていくと、小型の馬車の荷台の箱の中にカイ様が詰め込まれている。
そして、二人とも座席の方へと乗り込んで幸いカイ様の乗せられた荷台は誰も乗っていない。
馬車が出る前に私は急いで荷台に乗り込んだ。
馬車が出発すると、小型だけあって揺れが激しい。
でも、その分多少こちらで動いても気付かれにくいはず。
キッチリ閉められたカイ様が入った箱は外からしか開けられない作りになっている。
急いでそれを開けた。
箱を開くとなんと裸のカイ様が押し込められている。
気を失っている状態のカイ様を私一人でここから脱出させる事は出来ない。
私はカイ様の肩を叩いた。
「カイ様…カイ様……お願い…目を覚ましてください…」
月明かりで薄暗くしか見えないけれど、透き通った綺麗な肌は傷だらけだ…
私に力があったらあいつら絶対許さないのに!自分が無力なのが悔しい…
ライマーレのこいつらの拠点に着く前にここから離脱しなくちゃカイ様はライマーレの手に渡って酷い事されてしまう。
カイ様の手を握って目を覚ます事を祈る事しか出来ない。
途中でこの箱ごと荷台から落とす?
いや、この箱が荷台から落ちてアイツらが気付かないわけがない。
スピードが落ちたら一か八かカイ様を担いで飛び降りるしか…多少怪我はしそうだけど。
それしかないと考えて飛び降りるタイミングを見計らう。
すると、握っていたカイ様の手がピクっと動いた。
「カイ…様?」
「……こ………ここは?」
私は急いでカイ様の耳元で話し掛ける。
「大きい声は出せませんが、この馬車はライマーレの拠点へ向かってます…現在ライマーレの国領内に入っているかと…今、タイミングをはかってカイ様と飛び降りようかと」
「……そうか……暗くて顔が見えないが、君はアクアヴェールの国民のようだね。僕を助けに来てくれた事感謝致します。ありがとう……ここから飛び降りるのはもう少し待った方が良さそうだ。この辺りの森は道の整備がされていない。その辺に岩がゴロゴロしているから飛び降りた拍子に直撃する恐れが……は……父上……兄上…!」
突然アクアヴェールのお城付近が青白く、強く光出した。
すると、馬車を操っている二人がそれに気が付いて馬車の速度を緩めた。
「なんだ?あの光は?」
「誰か残っているのか?アクアヴェールの国民は荷台の王子以外は残っていないと報告を受けているぞ」
何だかわからないけど今なら馬車から降りられるかもしれない!