うろ覚えの転生令嬢は勘違いで上司の恋を応援する
お飾りの妻的な?
「解析《エクサプリカーティオン》」
魔法陣を描いた手袋をはめ、手を本にかざして呪文を唱える。すると本が光り、その光は寄り集まり本から生えた樹のような姿に変わった。
そうやって姿を現した樹や花などの植物の幻影から、私たち司書はその本の性質を読み取るのだ。
くぅぅぅぅぅぅっ!ファンッタジー!!!
こういう魔法が使えるのってまさに異世界転生の醍醐味ってやつよね!この喜びを噛みしめていたい……。
こうやって魔法書達を扱っていると改めて魔法が使える世界に生きているんだなぁって実感できる。それに、王立図書館の司書らしい仕事をしている!!
こういうことができるようになったのも侯爵のおかげなのよね。
……うん、現実逃避してはダメなのよね。事実に向き合わないといけないわ。なんたって私はとうに成人した婦人よ。自分の選択にけじめを持たなければならないわ。
それでも、今朝ハワード侯爵と話したことを思い出すと気が遠くなる。
今朝、私は昨日のお礼をハワード侯爵に言いに行った。
「侯爵、先日はありがとうございました。」
「気にするな、これ以上部下に辞められたら困るからな」
「……その、初日も私のことを助けてくれたんですよね?」
ハワード侯爵はティーカップを手に取い、チラと私の顔を見る。
「モルガンから聞いたようだな」
「はい……助けていただいたのにあんな生意気なことを言って申し訳ございませんでした」
「あいつの性格を知らなかったんだ。仕方がない」
そう言ってくれた候爵の表情は優しく、じんわりとした温かさが胸に広がる。
「この借りをどう返したらいいのかわかりません。兄を説得するとはいえ侯爵のご家族を引き合いに出して大丈夫なのでしょうか?」
「案ずるな。事前に説明しているから上手くやってくれるだろう。それに、喜んでいたしな」
あ、そういえば侯爵は幼少の頃より女性に興味がなくケモナーからのBLを歩んでいるお方だわ!
ご家族はやっと女の子との浮いた話に喜んでいるのでは?!
そうなると私からお断りしにくそうなんだけど、どうしよう……。
「それに、この話が進むと縁談を上手く断れて私としても助かるからな」
「左様ですか……」
つまり、風よけですか?それいつまで続く?
「この話を進める。借りはそれでチャラにしよう」
「い、いつまで仮恋人役をするおつもりなのですか?」
「さあ、いつまでだか?」
透き通った氷のような双眼が私に向けられる。私はその表情に思わず硬直してしまった。
こ、心なしかハワード侯爵が悪役令嬢のような微笑みをしているのですが?
まさか、察してくれってこと?ノアとの関係を維持するために利用されてくれってことなの???
このまま話を進めるってことは、お飾りの妻になってしまうのでは……?
正直抵抗はあるけど、私は侯爵のおかげで今首の皮が繋がっている状態で、この先も役に立つなら彼は助けてくれるかもしれない。たとえこのゲームのストーリーが終わってからジネットと対峙することになったとしても、彼ならどうにかしてくれそうだ。
Win-Winの関係、なのかもしれない。
今世は、恋愛を捨てることになりそうだ。
いや、今世もだわ。
それでも、前世で諦めた夢を今は掴んでいる。その恩人に、ちゃんと恩を返そう。
「私、このご恩はきっとお返しします!侯爵の事応援しますね!」
「……何のことだ?」
候爵はジト目で私を見た。
その日の夜、寮に帰ると領地にいる侍女のカロルから手紙が届いていた。手紙には侯爵を称える言葉が所狭しと並んでいる。
ハワード侯爵、あなた一体私の知らない所で何をしたの?
誰にも言えない、私とハワード侯爵の”お飾りの妻”作戦が開幕しようとしている。
魔法陣を描いた手袋をはめ、手を本にかざして呪文を唱える。すると本が光り、その光は寄り集まり本から生えた樹のような姿に変わった。
そうやって姿を現した樹や花などの植物の幻影から、私たち司書はその本の性質を読み取るのだ。
くぅぅぅぅぅぅっ!ファンッタジー!!!
こういう魔法が使えるのってまさに異世界転生の醍醐味ってやつよね!この喜びを噛みしめていたい……。
こうやって魔法書達を扱っていると改めて魔法が使える世界に生きているんだなぁって実感できる。それに、王立図書館の司書らしい仕事をしている!!
こういうことができるようになったのも侯爵のおかげなのよね。
……うん、現実逃避してはダメなのよね。事実に向き合わないといけないわ。なんたって私はとうに成人した婦人よ。自分の選択にけじめを持たなければならないわ。
それでも、今朝ハワード侯爵と話したことを思い出すと気が遠くなる。
今朝、私は昨日のお礼をハワード侯爵に言いに行った。
「侯爵、先日はありがとうございました。」
「気にするな、これ以上部下に辞められたら困るからな」
「……その、初日も私のことを助けてくれたんですよね?」
ハワード侯爵はティーカップを手に取い、チラと私の顔を見る。
「モルガンから聞いたようだな」
「はい……助けていただいたのにあんな生意気なことを言って申し訳ございませんでした」
「あいつの性格を知らなかったんだ。仕方がない」
そう言ってくれた候爵の表情は優しく、じんわりとした温かさが胸に広がる。
「この借りをどう返したらいいのかわかりません。兄を説得するとはいえ侯爵のご家族を引き合いに出して大丈夫なのでしょうか?」
「案ずるな。事前に説明しているから上手くやってくれるだろう。それに、喜んでいたしな」
あ、そういえば侯爵は幼少の頃より女性に興味がなくケモナーからのBLを歩んでいるお方だわ!
ご家族はやっと女の子との浮いた話に喜んでいるのでは?!
そうなると私からお断りしにくそうなんだけど、どうしよう……。
「それに、この話が進むと縁談を上手く断れて私としても助かるからな」
「左様ですか……」
つまり、風よけですか?それいつまで続く?
「この話を進める。借りはそれでチャラにしよう」
「い、いつまで仮恋人役をするおつもりなのですか?」
「さあ、いつまでだか?」
透き通った氷のような双眼が私に向けられる。私はその表情に思わず硬直してしまった。
こ、心なしかハワード侯爵が悪役令嬢のような微笑みをしているのですが?
まさか、察してくれってこと?ノアとの関係を維持するために利用されてくれってことなの???
このまま話を進めるってことは、お飾りの妻になってしまうのでは……?
正直抵抗はあるけど、私は侯爵のおかげで今首の皮が繋がっている状態で、この先も役に立つなら彼は助けてくれるかもしれない。たとえこのゲームのストーリーが終わってからジネットと対峙することになったとしても、彼ならどうにかしてくれそうだ。
Win-Winの関係、なのかもしれない。
今世は、恋愛を捨てることになりそうだ。
いや、今世もだわ。
それでも、前世で諦めた夢を今は掴んでいる。その恩人に、ちゃんと恩を返そう。
「私、このご恩はきっとお返しします!侯爵の事応援しますね!」
「……何のことだ?」
候爵はジト目で私を見た。
その日の夜、寮に帰ると領地にいる侍女のカロルから手紙が届いていた。手紙には侯爵を称える言葉が所狭しと並んでいる。
ハワード侯爵、あなた一体私の知らない所で何をしたの?
誰にも言えない、私とハワード侯爵の”お飾りの妻”作戦が開幕しようとしている。