betrayal~元彼御曹司との不倫~
◇
「けっこう呑んでるよな?」
私のワンルームの部屋に入って来て、小さな丸いテーブルの上に所狭しと並んだ酒類の空き缶を見て、中村春馬はちょっと苦笑している。
今夜、私の部屋に来ないですか?と、中村春馬をLINEで呼び出した。
昨日とは違い、今夜はお店で会うとかではなく、もう部屋に直接。
「まあ。昨日もそうだったけど、あなたの事を待ってる間に飲んじゃいました。
遅いから」
昨日はお店で食べたりもしていたから、ここまでのハイペースじゃないけど。
今夜は、箱買いしている缶酎ハイ等を次から次に空けている。
冷蔵庫で冷えた分はすぐに無くなり、今はコップと氷も用意して飲んでいる。
中村春馬は仕事終わりで来たのでスーツ姿だけど、私は部屋着なのもそうだけど、既にシャワーも浴びて化粧も落とし完全にリラックスモード。
「遅くてごめん。こっちに移って来たばかりで、まだまだ処理しないといけない仕事があって」
「そう。お疲れさまです。中村部長も適当に飲んで下さいね?」
床に置いてある、酎ハイの缶が入った箱を指差す。
「俺は、さっきコンビニでこれ買って来たから」
中村春馬はビニール袋から、日本酒の一升パックを取り出した。
「じゃあ、コップだけ用意します」
「いいよ。コップの場所分かるから、自分で取って来る」
中村春馬はそう言って、迷う事なくキッチンからコップを取って来る。
その時、一瞬、戸惑っていたのは、シンク近くに置いてあるゴミ箱に、零斗の私物が食器類をはじめ色々捨てられているのが目に入ったからだろう。