betrayal~元彼御曹司との不倫~
「昔は本当にあなたの事が好きで。別れた後もずっとあなたが好きで。
こうやってまたあなたに会えて、私は本当は心のどこかで嬉しくて、昔の気持ちを思い出したけど。
もしかしたら、まだあなたの事を好きなんじゃないかって思ったけど。
私はもうあなたより…」

零斗が好きなんだな。

零斗と付き合う迄、彼を仲良しの後輩としか見ていなかったから、告白された時は迷ったけど、居心地が良いから付き合い出した。
中村春馬の時みたいに、好きで付き合い始めたわけじゃなかったけど。
いつの間にか、凄く好きになってたんだな。

「真田とは、もう戻れないのか?」

「…分からない。仕事終わってから、LINEや電話とか来てるけど、無視してる。
好きだから、浮気された事が許せない」

やはり、好きだから浮気された事が許せない。

「零斗と、許せない気持ちのまま付き合い続けて、幸せになんてなれない」

世の中、浮気を許して再構築出来るカップルや夫婦は居るとは思うけど。
私はそのタイプじゃない。
表面上は許しても、心の底でずっとそれに引っ掛かり続ける。

「私も零斗に後ろめたい気持ちのまま、付き合っていけない」

私も零斗に対してずっと負い目を感じて行く。
中村春馬との事を知られなくても、罪悪感を零斗に対して持ち続けてしまう。

「浮気をされて知ってしまったのと、私自身浮気してしまった時点で、もう零斗とは終わりだな」

口に出して、そうだと思う。
私から零斗に別れると言ったけど、何処かで零斗と別れたくない気持ちがあった。

もう無理だな…。

「…零斗…」

その名を口にすると、目から耐えていた涙が零れ落ちた。
人前なので泣かないようにしていたのに。

「…本当に、好きなのに…」

ボロボロと涙が零れる。

中村春馬の手が私に伸びて来て、私の頬に流れている涙を拭ってくれる。

< 21 / 50 >

この作品をシェア

pagetop