betrayal~元彼御曹司との不倫~
◇
「けど、コンビニ行くなら何か食べに行く?」
「ううん。私、素っぴんですから」
中村春馬と二人、マンションから出る。
一応着替えてはいるが、化粧はしてないので、その中村春馬の誘いは却下する。
「十和子はそのままでも可愛いから。
眉毛が薄いのも、素顔が幼いのも」
そうやって、からかわれる。
「本当、人って変わらないですよね?
この5年でもっと中村部長は紳士になっているかと思っていたのに」
昔と同じ、そうやって私をからかって来る所が、相変わらず。
「俺は変わってないよ。
十和子は変わったけど」
「そう?」
私は変わったのか。
「変わった。また十和子は俺のものになってくれると思っていたけど。
本当に、俺は傲ってたみたい。
でも、そうやって変わった十和子に魅力を感じてる。
惚れ直したってやつ」
「なに、それ?」
なんとなく、手に入らないものの方が魅力的に見えるって事なのだろうな。
だから、変わっていない中村春馬に私は昔以上に魅力を感じてないのか。
「…とわちゃん?」
そう呼ばれる迄、私も中村春馬も近くに零斗が立っている事に気付かなくて。
私も中村春馬も足が止まった。