betrayal~元彼御曹司との不倫~
「絶対に、俺はとわちゃんと別れない」

零斗はそう言うけど、もう私と零斗との関係は完全に壊れているのに、別れないなんて出来るのだろうか?
きっと、修復なんて出来るレベルじゃないくらいに私と零斗との関係はボロボロ。

「中村部長。
俺、二人の関係を会社に言いますよ?」

零斗に脅されている。
こんな人じゃないはずなのに。

「零斗、お願い!それは言わないで!」

私はともかく。
中村春馬は既婚者で、うちの文夢堂の後継者。
部下と不倫なんて公になったら困る。

「真田、俺は覚悟はあるよ」

その中村春馬の言葉に驚いてしまう。
この人はそれなりに覚悟があって私に近付いて来たんだ、と。

「…どうせ、会長の孫の中村部長はクビになる事なんてないし、とわちゃんがどっかに左遷されて終わりなんだろうな」

零斗の言うように、結果はそうなりそうだけど。

「なら、言えばいい。
俺と十和子は二人で会社辞めて、俺が十和子を幸せにするから」

「は?あんた結婚してんのに、何言ってんだよ?!」

そう言った零斗のように憤ってはいないが、同じ事を私も思う。

「そうなったら、流石に俺も離婚するだろうし。
いっそのこと、会社さえも辞めてしまえば清々するんだよ。
十和子の事だけ考えていればいいから。
昔にそう思えていたら」

中村春馬が一体何を思ってそう言っているのかは分からない。
私の知らない事情がこの人にあるのだろうか?

分からないけど…。

ただ、中村春馬が会社を辞める事も離婚する事も、させてはいけない。

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