betrayal~元彼御曹司との不倫~
会社に戻り、自分の部署に戻る為に廊下を歩いていると。
目の前から中村春馬が歩いて来て。
そのまま通り過ぎないとと思っているのに、足が止まった。
私がそうやって止まるから、中村春馬も歩みを止めた。

ちょうど、2メートルくらいの距離。

「美怜さんから、全部聞いた。
なんで言ってくれなかったの?」

この人を責めるような、泣きたいような気持ちになってしまう。

「美怜…?」

最初、意味が分からないと言った感じだったけど、
すぐに全てを察したように、私を真っ直ぐと見て来る。

「言ってどうかなった?
俺と美怜が婚約していたのは本当で。
やはり十和子は愛人にしか出来なかったから」

"――うーん。十和子とは俺が結婚してもこのまま付き合っていけたらな、って、俺は思ってるんだけど――"

ああやって軽薄だったのも。
わざと私にフラれようとしていたのかもしれないと、今なら思う。

「もし、昔、ちゃんと本当の事を話してくれていたら…。
私は愛人でも良かった」

私はきっと、美怜さんの彼氏のように。
日陰でも大好きなこの人と居たいと思ったかもしれない。

「そう言われると思ったから、言えなかった」

私がそうやって影の恋人で辛い思いをする事を、この人は望まなかった。

「なら、また私に好きだとか言わないでよ」

一度そうやって私の為を思って私を手放したのに。
またそうやって、近付いて来て。

「…悪かった。また十和子に近寄るような事して。
真田と十和子の仲良さそうな姿見てたら、気持ちを押さえきれなかった」

やはりこの人はとても自分勝手で。
今もそうやって私の気持ちをかき乱す。

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