18婚~ヤンデレな旦那さまに溺愛されています~
先生は少しのあいだ私をじっと見つめて、それからゆっくりと離れた。
「無理しないようにね。悩みがあったら僕でよければいつでも聞くからね」
「……はい。ありがとうございます」
先生が満面の笑みになったので、少しほっとした。
さっき、妙に棘のあるような口調だったのは気のせいだろうか。
長門絢貴先生。
前から知ってはいたけど、保健室に来ることがないから、今まであまり話したことはない。
だから、別に先生と何か気まずくなるようなことはないと思うんだけど。
「いろはー、バッグ持ってきたよー」
「あ、小春」
小春が来てくれて心底安心した。
このまま長門先生とふたりきりでいるのは少し不安だったから。
「それでは、帰ります。ありがとうございました」
私がぺこりとお辞儀をして挨拶をすると、長門先生はリューセイスマイルを返してくれた。
「じゃあ、気をつけてね。秋月いろはさん」
どきりとした。
なぜ、フルネームでわざわざ呼ぶのか、その真意は理解できないけれど、先生の笑顔の向こう側に何か影のようなものを感じた。
これ以上関わってはいけない人だと、直感で思った。
だからもう、保健室には来ないようにしようと思った。