18婚~ヤンデレな旦那さまに溺愛されています~

「さあ、お茶にしましょう。奥さまはコーヒーと紅茶はどちらがよろしいですか?」

「私は紅茶で……あと、その」


 いつもドキッとするし、むずがゆくなるから、私は今まで言いたかったことをようやく口にした。


「もしよかったら、名前で呼んでもらってもいいですか?」

 訊ねると加賀さんは穏やかに笑って「はい」と答えた。


「では、いろはさん。冷めないうちにいただきましょうか」

「はい!」


 お茶をしながら加賀さんとたくさんお話をした。

 主に私が遥さんのことを訊いていたのだけど、彼女は私の知らない彼の昔話をしてくれた。


「まあ少し、変わったところもありますが、悪い人ではないのですよ」

「変わったところ……」

 気になってそれを口にすると彼女は苦笑した。


「いつもおひとりで行動されるのです。家族旅行もしたことはないと思いますね。いつもおひとりでどこかへふらっと行かれて、いつの間にかお帰りでしたし」

「ひとり旅が好きなんですね」

「旅というよりも、本当におひとりで過ごされるのを好んでいらっしゃるんですよ。家族と一緒に食事をすることもあまりなかったですしね」


 それは意外だった。

 お見合いのときは家族仲が悪いようには思えなかったんだけど。


「それ、いつからですか?」

「中学生の頃からですよ。ちょうど弟の奏太(かなた)さまがお生まれになった頃ですね」

「え……」


 弟ができたのに、家族で過ごすことはなかったの?

 むしろ弟ができたから?

 寂しかったのかな?


< 111 / 463 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop