18婚~ヤンデレな旦那さまに溺愛されています~
無理やりなのに優しいキスだった。少し落ち着いてくると、なんだか頭がぼうっとして、心地よくて体の力が抜けていった。
さっきまで怒りと困惑に満ちていた心は不思議と穏やかで、なぜ私はあんなに取り乱していたのだろうと思った。
「いろは」
遥さんがささやくように私の名前を呼ぶ。
それがとても心地よく感じた。
だけど、彼に対する不信感が消えたわけじゃない。
私は戸惑いとかすかな喜びのあいだで揺れ動いた。
遥さんが私の首筋からだんだん下のほうにキスをしていった。
そして、彼は私の服の中に手を入れてまくり上げる。
「だっ……だめ!」
「いろは」
力強く名前を呼ばれて、彼の顔を凝視した。
彼は今まで見たこともないほど鬱々とした表情で、悲しげに私を見下ろしていた。
「は、るか、さん……?」
私はこの顔をどこかで見たことがある。
これと同じような悲しみに満ちた顔を。
遠い記憶の向こうにあって思い出せない。
――ちょうど弟の奏太さまがお生まれになった頃――
突然加賀さんの言葉が脳裏をよぎった。
奏太くん……奏太くんは知っているような気がする。
たぶん、一緒に遊んだ。だけど、遥さんはそのときいなかったよね……。
記憶にないから。
じゃあ、どうして私のことを好きになったの?
いつ、私はあなたと会った!?