18婚~ヤンデレな旦那さまに溺愛されています~

 数日後、由希ちゃんがうちに来てくれた。

 私が帰っていることを伝えても彼女はまったく驚くこともなく、遊びに行くわと軽い感じで言って今日来てくれたのだ。

 部屋に招き入れると彼女は周囲を見渡して言った。


「ぜんぜん変わってないね。ていうか、荷物置いたままだったの?」

「うん。遥さんが全部持ってこなくていいって」

「ふうん。こうなることを予期していたのかな」

「え?」

 由希ちゃんはいつものようにラグマットの上に座ってバッグを置いた。

 私もそのとなりに座ってポットの熱々の紅茶をカップに注いだ。


「考えてもみなよ。本物(いろは)が手に入ったのに、わざわざ隠し撮りした写真を部屋に置いておくかな? 実家か彼所有の他のマンションにでも隠すんじゃない?」

 由希ちゃんの言葉に驚いて私はお茶を淹れる手を止めた。


「え……遥さん、他にもマンションを持ってるの?」

「あら、知らないの?」

「どうして由希ちゃんが知ってるの?」

「え? 普通にうちの母に聞いたけど?」

 わたし、本当に遥さんのこと何も知らないんだ。


 紅茶を淹れると由希ちゃんは「いただきまーす」と言ってそれをひと口飲んだ。

 私はとなりでマドレーヌの袋を開けてそれをかじった。

 なんだかちょっと、切ない気持ちになった。


 両親や由希ちゃんが知っていることを私は知らされていなかった。

 遥さんは自分のことを話さないし、私から訊いてもあんまり話してくれない。


 やっぱり知られたくない何かがあるのかなあって思う。



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