18婚~ヤンデレな旦那さまに溺愛されています~
「あの人さ、相当計算高いと思うのよ。だから、自分の部屋の本棚の奥にそんなものを隠すなんて普通しないと思うんだよね」
由希ちゃんはフィナンシェの袋を開けて、それをひと口食べて言った。
ひと呼吸おいて、由希ちゃんに顔を向けて訊いた。
「わざと、置いていたってこと?」
「うん。いろはに見つかることを想定して」
「ちょっと、よくわかんない。そんなこと、遥さんにとって都合が悪いんじゃ……」
「いろはに知ってほしかったんじゃない? 本当の自分を」
そんな回りくどいことをしなくても、きちんと話してくれればよかったのになあって思う。
いつもは甘い焼菓子がなんだか味気ない感じがして、私は紅茶でそれを流し込んだ。
そして、ため息とともに愚痴がもれる。
「なんだか、よくわかんない人だよ。冷たい顔をしていると思えば優しくなったり、真面目な顔して恥ずかしいセリフも言うし。私のことからかって楽しんだりするの。本当に意地悪な人。そりゃ、私の下手くそな料理だって全部食べてくれるし、文句を言われることもないからありがたいんだけど。でも、シュークリームで私の機嫌をとろうとするなんて、子供扱いもいいところだよ。そりゃ、朝一でお店に予約してまで買ってきてくれたのは嬉しいけどさー」
悶々と胸の奥にある感情をそのまま口に出してしまった。
すると由希ちゃんは笑顔で私を見て言った。
「いろは、大好きなのね」
「えっ……?」
なぜ、そうなるのか、本気でわからなくて絶句した。