18婚~ヤンデレな旦那さまに溺愛されています~
 せっかく戻ってきたのだけど、その日から私は勉強漬けの毎日だった。

 朝は学校へ行き、夕方に帰宅したら加賀さんがおやつの焼菓子を用意してくれていて(これがまた美味しいんだ)

 それから勉強をして夕食をいただいて、遥さんが帰宅したら加賀さんは帰っていく。


 そんな日々が続いた。


「それでは坊ちゃん、いろはさん、今日もお疲れ様でございました。これにて失礼いたします」

 加賀さんを見送ったあと、ふと遥さんに訊ねてみた。


「加賀さん、毎日来てくれるけど大変だよね」

 すると遥さんはさらりと否定した。


「そうでもないよ。加賀の表情は以前より生き生きしてる」

「そうなの?」

「根っからの世話好きだから。そして俺のことが好きだから」

「えっ!?」

 驚いて見上げると遥さんは口もとに笑み浮かべながら私をじっと見つめた。


「加賀には子供がいないから俺のことを息子だと思っているんだよ」

「あ、そういうことなのね」

 やだ……変なこと考えちゃった自分が恥ずかしい。


「俺も、加賀のことは母親のように思ってる」

 遥さんはどこか遠くを見るように、俯き加減にそう言った。


 その表情はあまり嬉しそうではなかった。


 そういえば、彼は美景さんの話は一度もしたことがない。

 おじさまの話だって彼の口からは聞いたことがない。


 ――遥は私に心を開かない――


 遥さんにとって加賀さんだけが唯一心を許せる人だったのかな。


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